-Resurrection-
□destind for... [中編]
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「うちのメカニックに伝えておきますね。それより、デバイスの試験から24時間経ってないんですよね?大丈夫なんですか?ちゃんと説明は受けてると思いますけど、無理しないで下さいね」
「大丈夫!心配すんなって。能力は使えなくたって、出来る事はあんだろ」
あっけらかんと口にする根拠の無い自信。それが妙に頼もしく見えるから不思議だ。
「それに、俺には相棒が付いてる。なっ、バニー」
ワイルドタイガーは、傍で黙り込んでいたバーナビーの肩を叩く。バーナビーは、不機嫌そうに横目でワイルドタイガーを見た。
「……そうですね」
「バニーちゃん、何か怒ってる……?」
「別に怒ってませんけど」
ぶっきらぼうに答えたバーナビーは、どこか拗ねたようにマスクを下ろした。
何が原因なのかはよく分からないが、スワロウテイルは敏感に不穏な空気を察する。
「……私、先に行きますね」
薄紫色のレンズのモノクルを左目に掛けると、二人の返事を待たずに飛び立つ。
嫉妬に似たバーナビーの拗ね方は、スワロウテイルとワイルドタイガーどちらへ対するものだったのだろうか。
雑念を払拭するように首を振り、モノクルのモニタに現場の情報を映した。
対岸に作業員や警察官の姿を見付け、ふわりと降り立つ。関係者達が示す先――――トンネルの入口は、コンクリートの残骸で完全に塞がれていた。
「これはこれは……」
その様に思わず絶句する。
圧縮した空気で吹き飛ばす事も出来るが、二次災害や中に閉じ込められた作業員への被害を考えれば不可能に近い。
とりあえず、と、掌から掌大の光の玉を数個作り出した。それらを従え、トンネルの上部へと跳び移る。
スワロウテイルは、NEXTの中でも稀な、二つの能力を持っている。そのもう一つがこの、光を操る能力。
トンネル上部を見渡すと、内部へ通じるであろう通気孔を見付けた。下ではワイルドタイガーとバーナビーが到着したようだが、入口の瓦礫の除去を待っている時間は無い。
「アニエスさん、トンネル上部の通気孔から中に侵入します。私の体型なら、ぎりぎり入り込めそうなので」
通信機からの「分かったわ」という一言を確認し、光を纏って通気孔を滑り降りる。
途中、ヒーロースーツの裾が壁に引っ掛かりはしたが、難無く侵入する事が出来た。幸い、下りた場所に落盤の被害は無かった。
身に纏っていた光を再び光の玉に戻し、辺りを照らしてみる。そこで、瓦礫の下敷きになった作業員の姿を見付けた。
「大丈夫ですか!?今助けますからね!」
下半身を瓦礫に挟まれた作業員の口からは、呻くような声が漏れている。
しかし、連絡にあった要救助者は二名だったはず。
ふと、視界の端に何かが映った。素早く視線を移すと、そこには瓦礫の隙間から伸びた人の右手があった。
この状況下で、空気を操る能力を発動させるのは危険だと分かる。しかし、時間が無いという事も分かっている。
ぐっと唇を噛んだ。
「……瓦礫の下敷きになった要救助者二名を見付けました。外にいるワイルドタイガーとバーナビー、それと他の関係者を下がらせて下さい」
『ちょ、ちょっと待って!一体何を考えているの?そんな狭い場所で貴女の能力を使ったら……』
「そんな事分かってます。だから、外にいる二人に手伝ってもらうんです」
回線の向こうにいるアニエスを説得し、外にいる人達を避難させてもらう。
ほんの一瞬、頭の片隅でバーナビーがいるなら大丈夫と思ってしまった自身に驚く。この気持ちは何なのだろう。
そして、避難完了の合図が届いた。
入口を塞ぐ瓦礫に右手を掲げ、能力を発動させる。トンネル内の空気が震え、低い音と共にコンクリートの残骸が勢いよく外へ吹き飛ぶ。
「スワロウテイルさん!!」
真っ先に聞こえたバーナビーの呼び声。
「バーナビーさん、タイガーさん!手をっ……」
貸して下さいと言う間も無く、駆け付けた二人はすぐに作業員を救出した。案の定、直後に瓦礫が崩れ出したが、スワロウテイルが能力で防いだため二次災害に至る事は無く作業員二人も無事だった。
「……全く、無茶をしましたね」
一人は担架で、一人はワイルドタイガーに担がれて救命艇へ運ばれていく要救助者を見守りながら、傍にいたバーナビーがスワロウテイルを見下ろす。
「無茶だとは思っていません」
それは自分の能力への自信と、
「大丈夫だと思ったんです。バーナビーさんがいるなら……」