イギリスの裕福な家庭に双子の姉妹が生まれた。 愛し合っていたイギリス人の父親と日本人の母親は大喜び。 姉にはレイラ、妹にはシルラという名前を付けて、2人を愛し育てた。 レイラとシルラは元気に育ち、好奇心旺盛になった。 また、2人はお人形のように可愛らしい顔をしていたので、両親は勿論、彼女たちを知る人々は「可愛い」と言った。 幸せに囲まれた日々が続いた。これからも、ずっと続くと誰もが思っていた。 シルラとレイラは10歳になった。 「お姉ちゃんっ!!何処!?」 4月12日、朝食を摂らず外へ飛び出したシルラは、レイラを必死に探していた。 レイラは3日前、学校へ行ったきり帰って来なかったからだ。 普段レイラはシルラと一緒に学校へ行っているのだが、その日はシルラが高熱を出してしまい、レイラ1人で登校することになった。 大好きなシルラが寝込んでいるから、学校が終わったらすぐ戻って看病する。そう母親に言って学校に行ったレイラは、夕食の時間になっても帰ってこなかった。心配した両親は警察に捜索願を出したが、未だにレイラを保護したという報告はない。 そして現在、平熱になったとはいえ、まだ安静にしなければならないシルラは、付き添いもなしにただ1人でレイラを探していた。 こうなってしまったのはあの日熱を出し、一緒に学校へ行けなかっ自分のせい。そう思ったシルラはレイラの無事を祈りながら、全速力で探し回った。 「はぁっ……はぁ……」 走り疲れたシルラは息を切らした。 今シルラがいるのは、普段登下校するときに渡る橋の前。 呼吸も整ったので、先に進もうとしたその時、異臭に気付いた。 「何?この臭い……」 それは鼻をハンカチで覆うほどだった。 異臭がするのは橋の上ではなく下だった。 橋の下は子供たちの遊び場でもあり、時々シルラも、レイラやクラスメイトと一緒にここで遊ぶことがある。 異臭が気になったシルラは調べてみることにした。 ここには壊れたテレビや、古くなって使い物にならなくなった家具など、粗大のごみが山ほどある。一番異臭がしたのは、子供一人分入れるくらいの大きな黒いスーツケース。 「何が入ってるんだろ……?」 スーツケースには鍵がかかっていなかったので、簡単に開けられた。 中身を見た瞬間、シルラの表情は一瞬にして凍り付いた。 「いやぁあああああっ!!!」 悲鳴が橋の下で響く。 悲鳴を上げるのも無理もない。 スーツケースの中に入っていたのは、不幸なことにシルラの最愛の姉、レイラの無残な姿だった…… |