短編

□獲物と捕食者
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「とまあ、こんな感じで知りました」

「ちっ、余計なことを。その風紀委員達は後で咬み殺しておかないとね。僕の楽しみを奪うなんて生意気だよ」

「オレは感謝してますので、どうかやめてあげてください」


きっと雲雀を犯罪者にしないための行動だろうが、そこは無視。
監禁しようがしまいが、この人は既に警察直行レベルのことを平気でやらかしているからだ。

一方、縋るような視線を向けられた雲雀はしばし沈黙していた。
綱吉は今、そそられると自分が言った泣き顔をしているのだ。
それに若干気を良くし、いつの間にか握られていたトンファーを仕舞う。


「で?」

「…………で?」

「君がここに来たってことは何か祝ってくれるんだろう?」

(ついさっき知ったって言ったんだから準備なんて出来るわけないとわかってるでしょーがッ)

「わかってて言ってますよねー、それ」

「何のこと?」


どこ吹く風とばかりにそっぽを向き、口笛を吹きそうな様子の雲雀に拳を握り締める。
が、ここで喧嘩をしても無意味どころか勝てないので、すぐにそれを開いた。


「……はあ。ヒバリさんはオレにやって欲しいこととか、何か欲しいものはあるんですか」

「じゃあ君からキスして」

「はいはい……って、ええ!?」

「いつも僕からじゃない。たまにはいいでしょ。ほら」

「え。で、でも、そのっ」


おろおろと何時まで経ってもする気配のない綱吉に業を煮やし、ぐいと腕を引っ張った。
ふたり分の体重を支えることになったソファが悲鳴を上げ、雲雀を押し倒す格好になってしまった綱吉は蛙が潰れたような声で叫ぶ。


「ぎゃあっ。す、すみませ……ってぬぉあ!?」

「もうちょっと色気のある声出しなよ……」


最後の叫びは雲雀が腰を撫でたからなのに。
わかっていたが理不尽過ぎる。


「ねぇ、してくれないの」

「うう〜。……わ、わかりました、やればいいんでしょう、やれば!!」


もうどうにでもなれ! と意を決して雲雀の唇に己のそれを落とす。
少し触れるだけのつもりだったのに、離れる前にがしりと後頭部を固定されてしまった。
身を引こうとしてもぴくりともしない。


「んぅっ!?」


突如侵入してきた生温かいものに驚いて目を丸くすれば、黒く艶やかな長い睫が見えた。
歯列をなぞり、顎裏を撫でた舌が更に奥へとねじ込まれる。


「……っ、ふ」


奥への侵入を果たした舌が綱吉のそれに絡まり、舌裏の筋を舐める。
ぞくりと脳天から背筋に痺れが走った。
いつもより濃厚な口付けに腰が砕ける。

力が入らず雲雀へのし掛かるように縋りついた綱吉にようやく満足したのか、最後にぺろりと淡紅の唇を舐め、解放する。
艶やかな笑みを浮かべ、抱き込んだ頭を愛おしげに撫でた。
雲雀の胸板に頬を寄せるような格好だったため、羞恥に染まった顔を見られなかったのが綱吉の唯一の救いである。

ぎゅう、と雲雀の服を握り締め、無自覚に色っぽい息を吐いたのがいけなかったのか。
いきなり綱吉の視界が反転した。
急なことに目をぱちくりさせれば、目の前には不敵に笑う風紀委員長様。
まるで極上の獲物を前にした獣のような光を瞳に宿し、綱吉の服に手を掛けた。

そして綱吉の超直感が告げる。
この状況は非常にヤバいと。


「あ、あのー。何をやっていらっしゃるんでしょうか……?」

「欲しいものは何でもくれるんでしょ」

「はっ? ……え? え?」


言っている間にも、雲雀はどんどん綱吉の服を剥いでいく。
気付けばほぼ何も身に纏っていない状態で。


「だから次は君を貰うよ。丁度良い感じに色付いてきたことだし」

「ぎゃーーーー!!!!」


その悲鳴を聞いてしまった風紀委員達は、綱吉の行く末を思い、心中で合掌したのである。




++++

雲雀様、誕生日おめでとうございます!!
つかなんつーベタな。
書いてて間に合わないかと思った……。
最後の方雑です、すみません。
ところで、うちの綱吉様はスレてなくても強気なんだろうか。

2012/05/05 初出
2012/08/14 修正

 
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