短編

□草壁の日録
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4月○×日

我らが敬愛する風紀委員長は、最近頗る機嫌がいいようだ。

あれは始業式の日だっただろうか?
新入生達が入ってくる校門を見て、とてもいい笑顔で笑っていらした。
面白い生徒でも見つけられたのかもしれない。




4月×◇日

今日の委員長は今までになく機嫌が良かったように思う。
しかもどこか満足げな色を綺麗な黒曜石の瞳に浮かべていらした。
鼻歌でも歌い出しそうなほどで、俺は思わず己の目を疑った。
白昼夢でも見ていたのだろうか。

思わず目を擦った拍子に持っていた書類を床に落としてしまい、委員長に咬み殺されてしまったが……。
やはり、見間違いなどではなかった。




5月××日

あの日以来、委員長の機嫌が急降下しているような気がする。
風紀の取り締まりも心なしか厳しく、違反者を念入りに咬み殺していらした。
気分屋な方だとは分かっていたが、ここまで不機嫌になったことは未だかつてなかったように思う。

ひと月前とは大違いだ。
なぜだ。




5月×△日

俺は応接室の前で悩んでいた。
物が壊れる音や痛々しい打撃音が中から聞こえてきたからだ。
おそらく風紀違反者かなにかを咬み殺しておられるのだろう。
しかしなかなか音が止まない。
もしかしたら別の音かと思い扉を叩いてみれば、入るようにとのお声が掛かった。
やはり俺の勘違いだと扉を開けたが、そこで人生最大の衝撃的な光景を目にすることになる。




5月○○日

最近委員長のお気に入りの沢田綱吉という生徒。
彼は全くもって不思議である。

ダメ人間という評価を一身に受けているのだが、実際は違うらしい。
理由はよくわからない。
だが委員長が納得しているようなので問題はないはずだ。

あの衝撃的な日以来、沢田は約束に違わず足繁く応接室に通っているらしい。
最近は毎日訪れているようだ。
今日、たまたまふたりの様子を見て、俺は思った。
委員長はあの子供に恋をしている、と。
そして子供の方はまんざらでもなさそうだ。
ただ、本人達は気付いていないようだったが……。

俺はここに誓おう。
あのふたりが自覚し、くっつくまで、傍で見守り続けると。




++++

草壁さん視点でした。
彼はふたりのお父さん(お母さん?)になればいいと思う。
というかこれ誰か読む人いるんだろうか。

2012/05/20 初出
2012/08/14 修正

 

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