短編
□あの時の彼の背中
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あの時の彼の背中は本当に無防備で
今ならナイフでも簡単に刺してしまえるんじゃないかって思った
だから
刺してみた
グシャッ
肉を砕く鈍い音が鳴ったと思うと
彼は目を丸くしてこちらを振り返り
直後
糸の切れた操り人形のように
地面に倒れこんだ
「あ……な………で………ゴプッ…」
必死に言葉を紡ごうとするけど
彼の口は開いた内臓から逆流してきた血で満たされる
唇から察するに「何で?」って言ってるみたい
だから俺は淡々と
そして正直にこう答えた
「だって…刺してみたかったから…」
〜END〜