短編
□君が傷を残した理由
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残してしまった傷痕は
永遠にその身体にしがみつき
彼の心をも蝕み始める
それなのに
彼はその傷痕を消そうとはしなかった
「これは僕がこの世界に生きていたっていう証だから…」
寂しそうに笑う彼を正面に見据えながら私も不自然に微笑み返した
―君は本当に強いね
私は傷を残したくない
傷を見るだけで吐き気と罪悪感がたくさん込み上げてくる
それなのに
一日一日確実に
その傷は増えていく
いつか私も
「この傷痕は私が生きた証なんだ」
って胸を張って言えるときが来るのかな?
〜END〜