ウェルディアナの花の下
□守りたいもの
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ウェルディに、なぜ優しくするのかと問われたとき、答えはすぐに出た。
「(愛しいからだ。)」
けれど、外が騒がしい。落ち着いて伝えておきたいから、様子をみようと立ち上がる。
「スヴェまで誑かしたかっ!カリスティアをどこにやった!!」
「!!兄上?」
大きな音とともに、兄が入ってくる。それも滅多に見ないくらい激昂している。
「カリスティアがいなくなった。お前が側にいながら、みすみす敵の手に渡るなど!!」
「ティアさまが、いなくなった……?」
動揺しているらしい彼が胸のあたりを抑える。
「このものを牢に連れていけ!」
「兄上!少しお待ちください!」
いつもの兄らしくない。こんな短絡的なことは絶対にしない。
「スヴェル様、僕は大丈夫です。
タナン王。姫様を、姫様をどうかお願いいたします。」
「ウェルディ殿!!」
俺を安心させるようにウェルディは困ったように笑う。
「僕は慣れているので。どうか、スヴェル様。
カリスティア様を、お願いいたします。姫様はお優しすぎる。」
「!!」
ウェルディの背はしゃんと伸びている。姫の無事を信じるかのように。
「兄上。」
「人払いを。」
兄上の執務室に連れていかれると、兄は疲れたように椅子に深く溜息をつく。
「スヴェ、フェル、言いたいことは分かっている。俺は、ウェルディ・シュナ・ガウディアを疑っているわけではない。
ティアが、自分にもしもなにかあったときに、ウェルディをタバン(この国)で一番安全なところに、と言われた。」
「どういう意味なんでしょうか。」
なぜ、カリスティア様は、ウェルディ殿をこの国で一番安全なところに?
もしかしなくても、
「敵の狙いはウェルディ殿、ということなんでしょうか。」
「たぶんな。カリスティアも、たぶん本人も心当たりがあるとは思うが。」
これ以上ウェルディ殿を苦しませたくない。
「まぁ、このタナンに牙を向けたんだ。とりあえずティアの捜索はミシェル姉上に一任している。俺は、ウェルディのところにいく。」
「俺もっ!」
「いや、スヴェを城の守護を頼む。フェルはこの騒ぎを隠し通せ。」
あの人はまた1人で泣いているのかと思うと心が痛む。やっと気がついたんだ。
俺はあの凛とした人にはじめてあったときから、目を奪われていたことに。
愛おしいと、守りたいと思っていることを。
「兄上っ!」
「悪いようにはしない。ウェルディは北の塔にいる。フローディアに予め整えさせておいたから、不自由はないだろう。日は入らないが。」
北の塔。兄上と、俺が育った場所。
そして母上が命を落とした場所。
俺たちの誓いと願いの塔。
フローディアは俺たちを育ててくれて、第二の母とも呼べる人。
「!!兄上、約束ですよ。」
「あぁ、分かっている。」
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