空が奏でる奇跡

□序章
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生まれてから12年間は、まさに

地獄だった


生きることに絶望し、
ただただ毎日繰り返せる凌辱に耐えるだけの日々。

僕は空色一族と呼ばれる呪術師の一族だ。
日本では純粋に呪術を使える一族は減り、今では唯一"空"だけが奇跡を起こせるとされている。

「も、むりっ……ぁ……かえでさまっ……。」
「だーめ。ヒナもっと啼いて。」

この男と、その父親に僕は何度となく犯され、穢された。
残された奇跡さえ起こせない。
醜い身体。

いつしか僕は声を失い、
感情すら欠落した。





















僕はただ、この家に飼われていた。部屋から出ることさえ叶わず、
着飾られ、穢されるただの人形だと思うしかやりきれなかった。

「っ………。」
「ざーんねん。ヒナの啼き声、僕好きだったのになぁ。
猥らに染まった愉悦の声、また聞かせて?」

僕はこの人が怖かった。
けど、僕はこの人に一生飼われるんだと、世界を諦めていた。



























そんな時だった。

「警察だ、高遠富貴。奴隷禁止法の違反で逮捕する。」

あっという間の出来事だった。
「怖かったね、もう君は自由だ。」
「……………ぁ…………。」

自由と言われても困る。
確かに怖かったけど、
それでも、ここは僕の世界だったのに。

「そうか、君。声を失ってしまったんだね………………。
ねぇ、僕と一生に住まないかい?僕と家族になろう。」

そっと割れ物に触れるかのように、近づく男の手が怖くて必死に暴れた。
けど彼は、暴れる僕ごと、その暖かな腕で抱きしめられる。

僕の身体は穢れてるのにっ!!!!!

「怖がらなくてもいい。君は、一人じゃないよ。」

その人は、僕の主のような人じゃなかった。父親が生きていたならば、きっと、

彼みたいなんだと、分かった。
その後のことはよく覚えていない。
気が付いたら、僕は彼こと、
橘颯太さんの養子になっていたらしい。
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