ウェルディアナの花の下

□輿入れ
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「改めて自己紹介しようか。おれはタナン王、カインド・タナン・レオパード。そっちに控えているのはうちの将軍のスヴェルだ。」
「お初お目にかかります、タバン皇国第一皇女カリスティア・タバン・コーネリアですわ。
そして私とともにタナンにきてくれたウェルディとレオナルドよ。」

船に乗り込んでから、タナン王と、カリスティアの晩餐が饗された。

「はじめてじゃないさ。一度見た時からお前を忘れられなかった。」
「きゃっ!」

カインドはおもむろに、カリスティアの左手をとると、唇を落とす。

「姫様、こちらへ。
タナン王、申し訳ございませんが、姫様はあいにくまだ我らタバンの姫君でありますゆえ、お触れになりませぬよう。」
「ふん!ただの侍従風情が騎士きどりか。」
「姫様のためならば、不肖ながら騎士にでもなりましょう。」

まったく表情を変えずウェルディは、カリスティアを背中に庇う。

「姫様は長旅でお疲れでございます、今日のところはこれで失礼しても?」

有無を言わさず、その場を辞すると宛てがわれた姫の客室に向かう。

「ウェル、大丈夫?顔色が悪いわよ?」
「申し訳、ありません。どうしてもあの男が気にくわかったので。」
「すなおすぎんぞ、ウェル。」

兵士たちがついてきたのはこのタバンの端、フィアレンス港まで。
ここから先はタナン王の従者たちばかりだ。

「ティア様。」
「大丈夫よ。もう少し肩の力を抜きなさい、ウェル。」
「どっちが姫様かわかんねーな。」

呆れたようなレオナルドにウェルディは睨みつけ、黙殺する。

「あまり気負いすぎて倒れんなよ、侍従長。」
「もう侍従長ではありません。」

このタバン皇宮を離れることになるときのために、ウェルディは皇宮の全てのことの対応をシェルンに託してきた。

「今のタバン皇宮の侍従長はシェルンです。私はたがカリスティア姫様のお側に仕える侍従です。」
「ほんと、お堅い奴だな、ウェルディは。」
「それがウェルのいいところじゃない。頼りにしてるわよ、ウェル。」

→sideスヴェル
「兄上、機嫌悪そうだな。」
「あぁ、悪いな。なんだあいつは!」

誰が見ても明らかだろう。タバン皇国の王女の嫁入りはただの人質であり、タナン王の狙いは豊かなタバンだということくらい。
それでもあいつは食らいついてきた。
面白い奴だと思った。
小さく震えていたのは兄は気付いていない。

「ウェルディ・シュナ・ガウディア………タバン皇国の侍従長です。
幼い頃から、病弱ながらカリスティア姫様の侍従を務めていたようです。
聡明で頭が切れるため、タバン皇国議会でも重用されていた……、ということくらいですか。」
「フェルは引き続きウェルディ・シュナ・ガウディアについて調べろ。カリスティア姫との関係も。
それから、スヴェ。お前は合間も見て、あいつについて調べろ。」

兄が隣のタバン皇国第一皇女に一目惚れしてから、それだけ頑張っていたか知っているだけに、その命令に逆らう訳にはいかなかった。
まぁ、姫様の近くに男がいるっていうのが嫌なのも分かるけどな。

「嫌われても知りませんよ。」
「好感度最悪っぽいしな。」

呆れたような幼馴染であり、タナンの宰相を務めるルズフェルが肩を竦めるもんだから、思わず言っちまったぜ。
目が怖いっつーの。

「はいはい、御意にございます王陛下。」

まぁ、でも楽しいことになりそうだ。楽しませてくれよ?ウェルディ・シュナ・ガウディア。

→sideスヴェルend
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