空が奏でる奇跡

□序章
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「雅都、ひなたが目ぇ覚ましたぜっ!!!」
「おはようございます、ひなた君。具合はいかがですか?」

目が覚めると、そこには自分と同い年くらいの少年が僕を覗きこんでいた。
こんな穢らわしい僕と違って太陽みたいな少年で、僕には到底触れない存在だった。

「そんなに警戒されなくても宜しいですよ。」
「そうだよ、ひなたっ!!!今日から俺達が家族だっ!!」

にっこりと笑う青年と少年。そして少年が手を伸ばしてくる。

「っ………………。」
「あ、ごめんな、ひなた。
怖い目にあったんだろ?もう大丈夫だからな。ここはお前を傷つけたりするもんはねぇから。
だから泣くな、ひなた。」

思わず払いのけてしまった。
少年は一瞬驚いたものの、手を引っ込めて笑った。

この人たちは絶対に僕を傷つけたりしない。そんな予感がして、僕は久しぶりに声を出さずに泣いた。
こんな時でさえ、声が出ない自分が嫌いだった。

「もう大丈夫だから。俺は橘疾風(たちばな はやと)、こっちは親父の右腕の赤穂雅都。
よろしくな、ひなた。」

僕は、この人たちと共に生きてみたいと思った。この人たちとなら大丈夫な気がする。

「君は生きたいですか?」

小さく頷くと安心したように赤穂さんは笑った。

「これ、今日から兄貴になるひなたに、義弟の俺からのプレゼント。
もっと話そう。」

受け取ったのはスケッチブックとマジックペン。
最初の一枚目の文字は決まった。





























『ありがとう、これからもよろしくね。
はやと、あこうさん。』
「僕のことは雅都でいいよ。雅な都ってかいて雅都。
よろしくね、ひなた君。」
「雅都だけ狡い。ひなた、ペン貸して。俺はこうやって書いてはやと。」

この温もりを手放したくないとさえ思ったんだ。

「ひなた、泣くなよ。」
「ひなた君、泣かないで。」
「「俺(僕)たちはひなた(君)の味方だから。」」

二人が両方から涙を拭ってくれた。
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