Dream2
□従者≠恋人です!
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今日は恋人であるルカとのデート。
たまには女の子らしくしてみようと思い、髪を下ろし、白いワンピースを着て、淡い桃色のパンプスを履いてみた。
「これでいいよね?」
いつもとは違う格好をしているため、多少の恥ずかしさを感じるが鏡に映った自分の姿を何度も確認する。
「……どこも変じゃないよね?」
「ホーウ!」
フェリチータの疑問に答えるようにフクロータが元気に鳴く。
「ありがとう、フクロータ。それじゃ、お留守番しててね」
フクロータを一撫でしてから部屋を出て、町へと向かった。
普段は屋敷内で待ち合わせしてから出かけたりするのだけれど、今日は広場で待ち合わせをしていた。
(……早くついちゃった)
噴水の石垣に座って腕時計を見る。
待ち合わせ時間より10分も早くついてしまった。
いつになく高鳴る気持ちを抑えるために深呼吸をしていると、誰かに声をかけられた。
「ねぇ、ねぇ。そこのシニョリーナ〜」
「一人かぁ?」
顔を上げると目の前に見知らぬ男が二人いた。
恐らくナンパだろう。
「…………」
誰か言い寄られてきたら、無視をするようにとルカに教えこまれてきたため、聞こえないフリをする。
「君、可愛いね〜」
「俺達と遊ぼうぜ」
「…………」
「え〜。だんまりぃ〜?」
「……ちっ。ほら立てよ!」
いきなり手首をぐいっと引っ張られて、無理やり立ち上がらせられた。
「嫌ッ! 離してッ!!」
振りほどこうと抵抗してもびくともしない男の手。
回し蹴りをしたいところだが、一般人を傷つけかねない行為は避けなければならない。
キッと男達を睨みつけるも彼らにニヤニヤと笑うばかり。どうしようかと考えていると――。
「その汚らしい手でお嬢様に触らないで下さい」
突如、凛とした声が響き、パンッとはたくような音がした後、掴まれた手首が解放されていることに気づいた。
男達とフェリチータの間に一人の男性が割って入ってきた。黒いスーツ姿に帽子……それはまごうことなき、恋人、ルカだった。
「ルカ……!」
「少し待っていて下さいね」
後ろに振り返って、ルカはにっこりと微笑むと男達に向き合った。
「アンタ誰〜?」
「あ? 誰だお前は?」
「あなた達に言う必要はありません。さっさと立ち去って下さい」
冷たい視線を男達に向けるも彼らはヘラヘラとするばかりで歯牙にもかけていない様子だった。
「立ち去る理由なんてないから立ち去れないな〜。やっちゃえ〜」
「ハッ! お前なんかこうしてやる!!」
男の一人がルカに向かって殴りかかるもあっさりと受け止められた。
ルカは冷笑を浮かべながら男の拳ごと腕をやすやすとひねりあげる。
「……ぐっ」
「どうですか? もう少し強くしましょうか?」
「……うぁあぁあぁ!!」
男の一人が悲鳴を挙げる見て、さすがにやり過ぎだと思ったフェリチータは慌てルカを止める。
「ルカっ! ダメ!!」
「お、お嬢様!?」
フェリチータに気をとられたルカを見て、男はルカに掴まれた手を振りほどくと数歩後ろへ下がった。
「に、逃げるよ〜!!」
「覚えてやがれ!!」
顔を青ざめて男達は一目散に逃げて行った。