小ネタ・単独SS其の2

□ある時の出来事2
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チョロリと舌を出し、蛇は大人しくヨルムの腕に収まっている
もっと人の来ない、蛇にとって住みやすい場所に移動させるため
俺達は歩みを始めた
先に帰ってもよかったのかもしれないけど
俺は彼に付き合う事にしたんだ
前にも思ったけれども、おぼろげな月の光に照らされた彼の顔はいつもにも増して

「美人だよね…」

はっとなって口を塞ぐ
綺麗だったらまだホタルや星で誤魔化せるけど、これじゃ

「僕の事…でしょうか?」

微笑を浮かべてヨルムが訪ねる
下手な言い訳は止めておこう

「怒った?」
「いいえ」

その答えが、意外だった、けど

「純粋に褒めて頂けることは嬉しいですよ
そもそも、女顔なのは自覚していますし
嫌であれば、そうならないような外見にするよう心がけます
そんな努力も工夫もせずに怒るのは筋違いですから」
「そ…そっか…」

何だか…胸のつかえがとれたと同時に
彼の心の広さと言うか思慮深さと言うのか…そういうものを感じて
けど、何て言っていいのか解らない

「あ、ありがとう」

何故ありがとうなのか、考えてみたら頓珍漢な返事であろう

「いえ、こちらこそ」

けど、彼から返って来たのはそんな返事

「夜に一人ではない 本当に助かります」


それが何を意味しているのかは、まだ解らない
けれど…

一般的に悪く言われている事が多い彼等一家
だけど、俺はもっと好きになったのかもしれない
そんな一日の終わりだった
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