小ネタ・単独SS其の2

□ある時の出来事2
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シュウ



地獄は基本的に夜のような静けさに包まれている
ただ、当てはまらない事も当然ある訳で…

「セクハラだーーー」

半泣きで肌蹴た服を戻しながら、地獄の案内役である天使が飛ぶ
此処からの脱出を測り羽を動かし続け、その後ろでは

「いい加減見てるこっちが熱いんだよ!!」

と、アカ・マナフ他数名の魔王が後を追う


地獄にも季節はあり、天界・地上と同じく今は夏
炎獄ゲヘナ・冷獄コキュートス等では実感が沸きにくい
しかし全体的には暑さを感じている…そんな所にフード付き
襟や裾からモコモコとした綿の見える上着に厚手の手袋…なんという格好で訪れる天使
あらゆる意味での糸が切れ、兎も角その服だけでもはぎ取ろうとした
突然の魔王の襲撃と自分にされそうになった事
混乱と恐怖で逃げ出し…
そして冒頭のような光景へと繋がってゆく

ナサギが地獄と別空間の境目に差し掛かった時であった

バチン

妙な音と共に、ナサギの視界が閉ざされていったのは…



「…………………」

(あれ…)

目を覚まし、軽く混乱する
自分は今まで寝ていた?いや、地獄でいつも通り調査に行っていた筈なのに…
肘がガクッと沈み、太腿を押し弾く

「う…わわわっ」

ナサギの体躯は巨木の枝へと引っかかり
もがく動きと共に何枚か木の葉が舞い落ちて
冷涼な風が、それを何処かへと運び去ってゆく
体の向きを変え、整え、羽の状態を確認する
幸い、目立った異変も無く痛みもほぼ皆無
確認の後、静かに地面へと舞い落ち、相変わらず続く闇に目を向けた
けど、殺風景ではないことから、ここが地獄以外の場所であろうことは
何とか理解出来た…それ以外は、依然ここがどこかは解らないまま

考え込むナサギの耳に入る羽音と、土踏む音

「ナサギエル  さん?」

随分意外そうな声色には聞き覚えがある

「あ…」

フェンの弟君が目の前にいた

世界の安定を目的としている職場に、彼は籍を置く
(俺とも、仕事上顔を合わせる程度は出会っていたけど
こうして向き合うのは思えば初めて・・・かな?)
妙な空間の歪みとエネルギーを察知して、此処へ辿り着いたらしい
魔王や悪魔がデーモンロードを使って出て来るものとは違うものだったから

「そういえば…」

衝撃を感じる前に、魔王から『逃がすか!』って
俺が出口にしようとしていた境目に何かしていたっけか
包み隠さず、思い出せる事を彼に話す
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