小ネタ・単独SS其の2

□認識の相違
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天界最高の機関が置かれる第六天『ゼブル』
自らの執務室へとミカエルが歩いてゆく
その先からはガブリエル
擦れ違いの様、ミカエルは無言でガブリエルから茶封筒を受け取り、角を曲がるとすぐに現れた大きな扉
何もせず、自動で開かれる

「ああ、ミカエル待っていたんだ」

中に居たのは、去った筈のガブリエル

「待たせてすまない。次回の法案に関してだが…」





雨濡れヒジュラ邸事件から数日後
マリクは少し長めの休憩時間を取り
出先(シェハキム郊外の森)でフェンリルと対峙する

誰にも見せないような真剣な顔…
であった筈が次の瞬間には崩れ、お互い笑みを浮かべ
何時の間にか距離を詰めたと思えば、衝撃で風が生まれ
全てを掠め去ってゆく

あの時出来なかった手合せ(デート)の代わりをしているのだ
その前の分も含めて…



―――――――――――

「またマリク様の勝ちだったのでしょ?」

手合せを終え
すぐ近くのロキ家に寄った際に茶を出してくれたアングルボダの言葉
言葉の内容は、結果と一寸も違わない


フェンリルからの先制、正拳突きを舞い踊るかのごとく流し
カウンターとして一本背負いに似た投げ技をお見舞いする
掴まれた腕を強引にすり抜け、空中で体勢を変え
サッカーのシュートのようにマリクへと大きく足を振るう
足首を掴んで宙吊りにしてしまおうかとも思ったが、あえて距離を置き後ろへと飛ぶ
着地と共に片足で地を踏み、反動で蹴り フェンリルは拳で迎え撃つ
その場で続く暫くラッシュの応酬はお互いにパンチや蹴りを交えた熾烈な物へと変わっていく
流れが明らかに変わったのは、マリクが押し負け体制を崩した時であった
チャンスを逃さぬ内に、フェンリルが力を溜め渾身の一撃を繰り出す
再び流した…と思われたが、溜めていた魔力による追尾弾がマリクを捉え
一発かと思われた弾は花火のように細かく分かれ、ショットガンのように迫る
掌を広げ、最初の魔力球が命中する刹那 現れた魔方陣による壁
弾は、ほぼフェンリル本人へと押し返され
それが今回の決定打ともなった…
よろけたフェンリルを地へ倒し、勝負はつく



皮肉な事に、この結果はマリクを嫌うロキによって齎されたもの
以前、ロキに女体化してしまう水をかけられた際も同様に隠された攻撃を繰り出され
当然の如く防御はしたのだが、更にその奥の仕込みに気付かず呪いを受けてしまった
それ以来、反射系統の魔法習得
念を推した防御意識も深めたのである

「フェンリルの服はこちらで弁償致します」

ボロボロな上に微かに血も滲んだ状態にしてしまっては…
傷は治したが、当然の如くフェンリルは着替えの為に自室へ

「あら、気にしなくとも別に構いませんのに」

笑みと共に片手で口を抑え、もう片手はマリクを扇ぐ
相変わらずアングルボダらしいとも思える行動であるが

「怒らないのですか?我が子を傷つけられて」

言葉の直後、全てが変わる。雰囲気も空気も
迷う様に、悲しむように彼女が答える

「やっぱり、可笑しいのでしょうか?」

表面には見せぬが、戸惑うのはマリクの番へと移り変わる
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