小ネタ・単独SS其の2

□回顧憶
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氷砂糖を樽底に敷き、材料を並べ
また氷砂糖で閉ざし、これでもかと言うほど酒を注ぎこむ
3〜6ヵ月熟成させれば飲み頃だと、蓋を固く閉ざしながら考え
その足でついでに幾つものテーブルピッチャーへ種類の違う原酒を満たし、貯蔵庫を後にした

キッチンではアングルボダがロキの為に腕を振るっている
愛する人が帰って来たのだからと、内容も一入
牛肉に鮭(両方ともロキの好物)がメインの料理が並んで行く
…毎度の事ながら、ヨルムとヘルが帰らぬままだが
酒を飲み交わす相手が、いつも通り残ってくれていた
用意してくれた肴と共に
日の高い内からロキは妻(アングルボダはあまり酒を飲まないが)子と飲み始める



(あ、駄目だ 俺の表情ヤバい)

心で思った事と同じく、顔の筋肉が緩みまくっている、現在進行形で
ロキの目の前には写メの画像と息子の姿
比べているのは、幼い姿と今 だが、外見は何時もと違う
妻と同じ色の髪、自分と同じ色の虹彩
フェンリルが、あの時の変装魔法をロキへと披露していた

(有りっつーか、カワイーっーか)

アングボダから写メを送られて知ってはいたが
実際目の前にするとここまでとは…カメラ機能での撮影がすでに2ケタへと突入し
更に自分の持っている認証コードの刻まれたカードの容量を奪ってゆく
いっそ動画にでもしたほうがずっと軽いだろうとも思えるほどに
酒の力もあってか大暴走

「そのぐらいにしとけよ」

パチンと指を鳴らす音が響くと同時にフェンリルが魔法を解き
ロキは少しだけ不満の声を漏らす
しかしフェンリルはスモークサーモンを頬張りながら知らん顔
紛れさせるためか、ロキも牛のタタキを口へと運ぶ

更に酒が進み、積み上げられた皿をアングルボダが洗い、片づけている
残された二人は窓際まで身を移し、夕闇と星を見ながら更に酒を煽り続けていた

「最近はどうだ?」

唐突にロキがフェンリルへと問う
それは本当に、父が子を思う声色であった

「ん…悪く   ねぇ
あいつ…マリク  すっげぇ優し   」

フェンリルの返事にグラスクラッシュセカンドといきたかったが
今手にしているのは高価+お気に入りなものなのでテーブルへと下す

見た横顔は本当に幸せそうで…そんな顔させるあいつが益々気に喰わない
ガタリとフェンリルが立ち上がり、部屋を目指す
もう限界であったのだろう だからこそロキがあの質問をしたのだから

「お休みなさい、フェンリル」「…ん     ぉやすみ…」

片づけを終えたアングルボダとフェンリルが擦れ違い
今までフェンリルが居た席へとアングルボダが腰を下す

「いいのか?あいつらの事」

隣の妻にも、子の状況を伺う

「私は…」

アングルボダは、夜の静けさのような声で自らの胸の内をロキへと述べだした
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