小ネタ・単独SS其の2
□愛(かな)し乞いし
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あいつを好きになった理由で一番最初に浮かんだのは笑顔
本当に優しくて思ってくれているような微笑
今までの冷笑や嘲りとは違う物であったから
今も、酒と肴を堪能していてふと気づく
マリクが此方へ向けてくれる表情に
天使であることを納得させる、包み込むような優しい笑み
(こいつ 本当に)
綺麗だな
そんな感想が胸に浮かぶ
体を重ねた後で、マリクがどれだけの美形であるのか
その事実に気付いたっけか
初めは『興味が無い』だったのが、受けた仕打ちで憎しみや嫌悪感しかなかったと言うのに
「そうか、光栄だな」
「え゛」
何処まで言葉に出していたのだろう
笑みに少しだけ加虐的な色がにじみ出ている
もうマリクの方も待っていられないのか、指がフェンリルの鎖骨を確かめるように這い
胸の輪郭をなぞりゆく
それだけなのに、すでに背の中心から疼きが走り
呼吸が荒くなる
「だが、今のお前の方が…」
身を寄せられ、マリクの胸に収まる
しっかりと着込まれた服越しであろうとも 伝わる鼓動に熱、呼吸
気付かれぬようキスをおとし、恥ずかしくなって頬を寄せて誤魔化す
スッと手で頬を掴まれ、中指と薬指が唇をそれぞれなぞり
それだけには飽き足らず口内まで侵入を果たす
指先を舌先で舐め、歯で甘噛みしつつ飴をなめる様に包み
指と爪の境界まで固定して深く吸い上げる
新たに指が口内に侵入する
未だ噛み跡の残る指
一層丹念に、愛おしむような丹精込めた愛撫を続け
少しだけ、口から唾液が滲む
幾度慰めても、マリクの傷は消えてくれない
その事実に、胸が切ない感情で満たされてゆく
こんな思いを抱く時が来ることなど、予想すら出来なかった
この切なさも、また愛なのである
スルリと口内から指を抜かれ寂しさを感じる
「ひうっ」
ビクリとフェンリルの全身が震えた
カップリと、広範囲に渡りマリクが耳を食んだのだから
今フェンリルがしてくれた愛撫へのお返し と言わんばかりに
毛の生え際まで舌で割り込み、丹念に地肌を舐める