小ネタ・単独SS其の2

□待宵
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夜が嫌い
正確には、広くて暗い全てのものが嫌い
空に月が浮かぶのなら、明るくてまだいい
だけど、夜を重ねて満ちてゆくその姿とは裏腹に、寂寥の影が心に闇を落す




「なあ、マリク?」

困り、赤らめた顔でフェンリルがマリクへと問う

「どうした?」

マリクはどこからどう見ても不気味な程ご満悦な笑顔を見せながら
美しい化粧箱の中身を抓むと、体全体で抱き込んだフェンリルの口元へと運ぶ

「どうして俺の自由に喰わせてくれねぇんだよ」

今日の土産は発泡日本酒にチョコレート
酒はまだいい しかしマシュマロといいチョコといい
手で食べられる甘いものは自由に食べさせてくれないのは何故?

「そうだな…餌付けだからか?」

マリクらしい答えだ…本当に

「それと、『ご奉仕』への期待  …か?」

多分、指ふぇ…アレのことだろう
…望んでくれているというのなら、こんなことしなくても応えるのに

マリクの手を捉えながら、2個めのチョコを食む
甘い香りと微かな苦味、何か混ぜ物があるのかどこかで嗅いだような香りもした
溶かし飲み欲し、目の前に固定した指を食もうとする

だが…

(あ…   ?)

何故か急に視界が遠のき、瞼に重みが増す
体が震え、今の体制を取るのもつらく
マリクが支えてくれなければどうにもならない そんな状態となっていた

「     …これで確定…か」

近くだか遠くだか解らない所で声が聞こえる

「確かめておきたいことがあったんだ
体の自由が戻ったら、その時にな」

どういう事なのか
ただ少しだけ、薄れゆく意識の中で感じた頭や頬を撫でてくれる心地良さは覚えていた



心地良い眠りから普段無いはずの刺激で目を覚ます

「ああ、意外と早かったな」

まだ頭はぼんやりとするが、マリクの姿を見て意識が戻ってゆく

「…何が確定だって?」

一番最初に浮かんだ疑問
マリクへと迷わず突きつける

「お前がマタタビに弱い ということだ」
「は?」

何でそんなものに?猫じゃあるまいし

「猫じゃなくとも、犬でマタタビに弱い個体が存在するからな」

見透かしたようなマリクの答え
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