小ネタ・単独SS其の2

□過現交叉
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シャマインの郊外

密集した街並みから比較的ゆったりとした間隔で少し大きめの屋敷が立ち並ぶ
その内の一際目立つ家へ通され、早々にマリクへタオルが手渡される

「仕事があるのでしょ?こっちで色々済ませておくから
お風呂は…貴方だったら覚えてるわよねぇ」

ヒジュラの言葉…節々が心に引っかかる気がするが
何故そうなるのか、フェンリルには分かっていない
すっと、マリクが手にしていたタオルをフェンリルへと突きだす

「奥突き当り左側…行っておいで」「…………」

何時もの有無を言わせぬ表情、無言でタオルを受け取り
案内通り進む ……なるべく、早く出た方がよさそうだ

風呂場では乳白色の湯から甘い香りが漂い、鼻孔をくすぐる
まずは桶で体に一流し 一層香りが広がった
―パタン― 脱衣所から扉の開く音が聞こえ

「フェンリル」

声の主は…いや、今更過ぎて言う事もない

「服は俺が洗ってすぐ乾かす
風呂が終わったらここで待っていてくれ」
「え…あぁ…解った」

ここでのマリクは、明らかにおかしい
けど、それに気づきたくないのか、無意識にフェンリルは意識を逸らしていた

さっと髪も頭も体も いつもは丹念に洗う尾ですら早々に切り上げ湯船につかる
更に香りは増し、熱も心地良くて…

(そういや…この香り)

どこかで…

―ギシ―  (…?)

妙な音に目を開き、自分の姿勢に疑問を抱く
何故、寝転んでいるのか
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