小ネタ・単独SS其の2

□その名は 意味は
2ページ/9ページ

「今度の芸術会  一緒に行ってみるか?」

何時も通り、月に一度だけ男女としての蜜月を過ごす間
マリクに問われ、すっかり忘れていた事を思い出す
そういえばあったな、と

「何で急に?」
「こういうのを好むと思ったのだが」

確かにそれは事実である

「この家の書庫の本
特に美術関連は他と比べ遠目でも解るほど劣化していた
だとすれば、この家で暇を持て余す者が幾度となく見ている
そう推測できるだろう」

アングルボダは日々の掃除や洗濯
食事の支度に女子会。割と忙しめな毎日を過ごしている
(本日は午後からタイタニアの茶会に呼ばれているらしい)
ロキは家にあまり戻らず
ヨルムとヘルは言うまでもない

なら残るは当然、フェンリル

「ラファエルの事も、画家と勘違いしていたしな」

本当に鋭いというか目敏いというか…
クイッと顎を掴まれ、視線を合わせられる

「行くのか行かないのか…聞かせてくれないか?」
「行くのはいいけどよ…あまり俺達の関係を知られるのは…な」

強制的に女体化させる酒の量も以前よりかなり減っている
ロキに漬けて貰わなければ…いざって時に使えないのはそれこそ痛い



「あら、ならちょっと変装でもしてみたらいいじゃない」

出掛ける準備をしつつ、アングルボダが二つの瓶を置き 悩む

「どっち…だったかしらね
両方とも私とロキで作ったのだけど…」

どちらも同じような瓶で、書かれている文字も【若返り】と

「若返りなら林檎でいいんじゃねぇのか?」

イズンの林檎の効能は天界でも重宝されている

「けどね、林檎は一度食べるとまた元の年に戻るまで時間がかかるじゃない
神様の導きで体が変化した天使以外には効果がないし…
だからその辺りを上手くコントロールした薬を作ったのだけど…」
「だけど?」
「片方はちょっと戻り過ぎちゃうの
命に別状は無いけど…ティースプーン一杯十五分って所ね
飲んで確かめて」

タイムオーバー

アングルボダは扉を開け、屋敷前の道を駆け
空へと浮かび上がり、やがて街の向こう側へと消えて行った

(戻り過ぎるって…どこまでだよ)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ