夜に舞う蝶

□6.ちょっとどういう事かな?
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・主人公視点





父からの帰宅命令メールを受け取った私は、初めて会った美術部の面々を残し、大急ぎで家に戻った。



道を全力疾走して、開いているであろう門に飛びかかる。



それから扉に食らいつき、大急ぎで玄関に入った。



そこに綺麗にそろっているハイヒール。


あれ、大きめの靴は……、無い?






『ただいま〜!』



「ああ、お帰り! 待ってたよ。玲」



ひょっこり現れたお父さんは、見た感じいつも通りだ。

でも、ちょっと嬉しそうに見える。




「あら、この声って……! 玲!」



そうして、大好きな声が家の奥から聞こえてきた。



父に並んで微笑む、小柄な黒髪の女性。




『お母さん!!』




引っ越しの時にちょっと手伝って貰っただけだったから、夏休み以来会っていない。



うわあ、懐かしい!


私は思いっきり、お母さんの腕の中に飛び込んだ。





「玲。久しぶり! 会えて嬉しいわ! あら、ちょっと太った?」



『うるさい! お母さん……私も嬉しいよ』



暫し、互いに抱き合う。


今の年頃だと母娘は仲が悪いのだろうが、うちは母娘いつも遠距離だから、そういう事態には陥らないのだ。


元テニスプレーヤーのお母さんは、兄貴のコーチをしている。
だから兄貴と一緒に行動することが多くて、ほとんど家に帰ってこない。

でも帰ってきたときはいつも、自慢の手料理を振舞ってくれる。

ほんとにおいしいんだから。


お母さん、帰ってきてくれてありがとう。


あー、傍から見たら、相当仲良しだと思うな。






私は暫くして、お母さんの腕から離れた。


靴を脱いでカバンをおろす。



ところで……、お母さんが帰ってきたとなると、あの変人兄貴は……。


まぁ、覚悟を決めた方がよさそうだ。





でも靴が無い。それに……。



もしや兄貴、夜遊びか。






それにしても、充実して落ち着いた日々だ。

私は精市くんのことをすっかり忘れたまま、笑顔で、両親とリビングに入っていった。






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