雲外に蒼天あり
□第2Q.顔合わせ
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その日の朝――、黒子は滅茶苦茶早く登校していた。
昨日の出来事を受けて、騒ぎを恐れた名前がいち早く登校してくると踏んでいたからだ。
が、黒子の想像を覆し、名前は中々教室に現れなかった。
そして、「いっちばーーーーん!」とお調子者そうな男子生徒が飛び込んできたのを皮切りに、続々とクラスメイトが教室の席を埋めていった。
気付けば、時計の短針は八の目盛に到達していた。
黒子は、数十分前から目を通していた小説を遂に読み終えてしまい、ハァ、と小さく溜息をついて教室を見渡す。
そろそろ、名前を囲む生徒の騒ぎ声が聞こえてもいいはずだ――、そう思ったのだが、反対に何故かやけに廊下が静かなことに気が付いた。
(おかしいですね)
黒子が疑問に思っていると、二人の足音が静寂の中で教室に近づいてくる気配がした。
なんだか重苦しい空気だ、と黒子は顔をしかめる。
それにその空気の発生源のうちの一つは――、名前さんだ、と気付いた。
因みにこれは、空気を読む能力に長ける黒子だからこそできる技だ。
(もう一人は、知らないです)
黒子は、静まりかえった教室の中で、じっと黒板横の扉を見つめた。
そして。
現れたのは、190を超える巨体と、その隣で笑う、名前の姿。
「……」
因みに二人ならんだ迫力があまりにも凄すぎて、皆黙ってしまったらしい。
その後直ぐに、巨体の男――、火神が『トイレ』と教室を出ても、圧倒されていた女子はしばらく動けずにいる。
それを良い事に、黒子はそっと名前に近づいた。
「誰ですか、今の人」
「ああ、黒子、おはよう。悪いな、お前、どうせ俺の事待ってたんだろ」
「はい、流石、よくわかりましたね」
「影の天帝なめんなよ? ハハッ」
名前は黒子の前で、ニヤッと笑った。
「で、今の人誰ですか」
黒子が、再び聞く。
すると、名前はグッと黒子に身体を寄せて、耳元で囁いた。
「お前の『光』候補だ――」
「!!」
黒子は、名前の言葉を聞いてハッと目を見開いた。
そして、「名前さんが言うなら、間違いないです、きっと」と呟いた。
「おう、楽しみにしてろ、黒子」
名前は、クールなイケメンスマイルで言うと、黒子の肩にポン、と手を置いて自ら女子の輪の中に、身を投じた。
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