擬アン

□4月1日
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おまけ



いつも通り餡が菌のロボットをぶっ壊して、それから菌を追い詰めて、餡が拳を振りかぶったから僕は一瞬目を閉じた。それから菌のお決まりの台詞を待ったけど、聞こえてきたのは町の人々のざわっとした空気の揺らぎ。

僕が目を開けると、町の人々は誰も彼も打ち上げ花火を見た時のように首を真っ直ぐ上に向けている。僕も隣のジャムさんやバタコさんに習って上を見上げると、餡の足と菌の足が見えた。餡が菌を抱えてもうスピードで空へ飛んでいく。

子供たちはみんな一様に「なんでー?」と不思議そうだったけれど、しばらくすると面白そうに笑いはじめた。さっきまでのエイプリルフールのお祭り騒ぎがまた流れ始めたみたいだった。

隣でアンパンマンカーにもたれているジャムおじさんは、煙草をふかせながら、しょうがねえなって嬉しそう。バタコさんも楽しそうに、二人を見上げていた。

少し後ろで辛の声、そういえば二人とも来ていたんだ。辛も食も飛べるのに、追いかけるでもなく僕らと一緒になって餡と菌が飛んでいった方へ手を振っていた。

僕はその時の、ジャムさんやバタコさん、辛、食、みんなの嬉しそうな表情や、見上げたぬけるような空の青、町の人々のお祭りのざわめきを僕はきっと忘れないだろうと、立ち尽くしながら胸の奥で強く感じていた。



●おしまい●



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