宝物

□フリーss:ニコヤさん
1ページ/7ページ

息の詰まる、効きすぎた暖房が、思考回路を鈍らせる。
冬というにはまだ早い、夏の名残のない秋。
窓の縁に吹き寄せた塵が、日光をうけキラキラと乱反射している。
暖房の設定をさげるために、立ち上がるのさえ億劫で、無意識に足元に蹴り落として
いた布団をたくし上げ、適当に広げる。
朝夕は冷え込むこの季節、外の暖かそうな様子から察するに、もう昼近くなのだろ
う。

しまった、だるい…

ここ最近、仕事に追われていた。
今日は久々の休みだというのに、風邪っぽくてう動けない。
なさけないな。


♪♪♪〜♪〜

妙に高音のカノン…枕もとの携帯着信。
ディスプレイには、辛の文字。
今日は辛もお休みだと言っていた。
「もしもし…」
電話に出て、自分の声がガラガラなことに驚いた。
そういえば、喉も痛い。
『もしもし?何、どうしたんだよその声』
「あー、どうも風邪らしくて…」
ごろり、仰向けになると、少しは声が出やすかった。
『風邪ぇ?…お前でも引くんだな』
「どういう意味ですか、それ」
『お前今まであんま引いた事ないじゃん。何とかは引かないのかと思ってた』
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ