倉
□すなお
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なぁ、お前は知ってるか?
俺が本当はお前が思う以上に、お前を好きかもしれないってこと。
「おはようございます、辛。」
朝、しかも休みの日の8時。
奴はあらわれた。俺はもちろん今まで寝ていたわけで、機嫌は最悪なわけだ。
「ちょっと辛、何で閉めるんですかっ」
一生懸命ドアの向こう側から叫んでいる。何で?って当たり前だこっちは眠いんだっつうの。せっかくの休みぐらい昼まで寝ていたい。
眠たさの極地に至ってしまいドアの前でうとうとしていると、また勝手にドアが開いてあいつが入ってきた。
「おはようございます。」
この街の女の子をメロメロにしてしまう王子様スマイルが憎い。
「朝っぱらから何か用かよ?」
観念して目をこすると、こいつらしい答えが返ってきた。
「辛に会いに来ました。」
頭がはっきりしないうちにこれはないだろ。つうか、そんなことで朝から来んなよ!いろんな言葉が頭の中を回って顔が熱い。とりあえずは、
「出てけ!!」
ドアの向こうに力いっぱい押すのだかまったく動かない。
「そんなこと言って、本当は会いたかったでしょう?」
そう言うこと自分で言うな!
「ぜんっぜん」
ぶんぶん首を振って否定する。
「照れてるあなたも可愛いですよ。」
なんてこりずに耳元で囁かれる。くそ、俺がこれに弱いこと知ってるんだ。
玄関での攻防戦が終わると、突然抱きかかえられた、これは所謂お姫様だっこってやつか?
「あなたがそんなに眠いなら、一緒に寝ましょうか。」
にっこり。
こいつが俺を甘やかすから、どこまで行っても俺は甘えてしまう。最近、忙しくって最後に会ったのは一週間も前で本当は会いたかった。ずっとずっと。さっき言ったのは嘘だってお前は知ってるのか?
「辛、寂しかったですか?」
「ぜんっぜん。」
「私は寂しかったですよ? ねぇ、名前呼んで下さい。」
「・・・。」
にっこり
「・・しょく」
「はい。」
またにっこり
「来てくれてありがと。」
「よくできました。」
おでこにキスされた。
優しく、こいつの持つ素直さを分けてくれる。
食に少しでも伝わればいい。
キスする前のびっくりした顔。そんなのが無くなるぐらいに。
●ぉゎり●