□似てるところ
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「私に近づかないで下さい。」






いつもと変わらず
空は青くて
外は寒くて
なのに、なんだこれ?


街で買い物をしていたら食を見つけた。柄にもなく自分から声をかけた。振り向いた食の嬉しそうな顔はすぐに消えて眉間にしわをよせて、言い放った一言。




固まってしまった。


食はそのまま行ってしまい、驚きすぎて俺は言葉も出ない。



いやいや、ちょっと待て。
よく考えろ。
俺、あいつに何かしたか?

何かしすぎていてわからない。

でも、それは食が俺にいろいろするからいけないんじゃねぇか。

3日前にあった時、
「べたべたすんな!」
って言った。
でも、そんなん毎日だろ。
じゃあ、他には
「うぜえっ」
って言った。
これもよく言うよな、俺。


もしかして、
我慢の限界。
とか?




その場でずっと固まってた。

「辛、何やってんの?」

振り向くと餡がいた。
言葉が上手く出せない。
「あー、」とか「その、」とか言ってる俺を見て、餡は何を思ったのか少し笑いながら。


「あぁ、食のお見舞いね。」


また固まってしまった。

その瞬間、全てが繋がる。


「ごめん、また後で!」

言ってあわてて、駆けた。

「何やってんだよ、あいつ。」


食の家につくと俺はチャイムも鳴らさず勝手に入った。そしたら食が驚いた顔で出てきた。


「どおしたんですか?」


こいつは紳士だから。
えらいも、つらいも言わない。

「見舞いに決まってんだろ。」

こいつはアホだから。


「うつったらどうするんです?」


いつもは勝手なくせに、
こういう時だけ真面目。


「病人がぐだくだ言うなっ」


困ったみたいに
心底、嬉しそうに

「ありがとうございます。」

なんて言うから。
少し、淋しくなった。





要するに、
食はアホでナルシストだけど

バカじゃないってこと。


●ぉわり●

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