□寂しい今日
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山なし、落ちなしで無駄に長いです。
お読みの際はお気をつけてっ


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ある夜、家に食から電話がかかってきた。めずらしく食の声は落ち着いている。

「明日、絶対に何もしませんから一緒にいて下さい。」

消え入りそうな声に俺は、しかたねえなといつものように答えておいた。

朝になると頼んでも無いのに迎えに来た。俺が泊まりの準備をするのをみて、

「来てくれなかったらどうしようかと思いました。」

なんて苦笑した。


それから二人で映画を見て、夕食の材料買ってカレー作って、風呂に俺が入ってても食は来なかった。
当たり前だ。食は約束を破るような男じゃない。

風呂から上がると、食は本を読んでいて交代した。

今日の変な雰囲気のヒントがあるかもと思って食の本を見てみると
「フィボナッチ数列の謎」
明らかに数学の本。


もう寝ようと言うことになって、目を閉じると突然抱きしめられた。

「何すんだよ!」
ってびっくりして怒鳴ったら、今にもなくなりそうな声で淋し気に

「今日はこのままがいいです」
俺を抱きしめる腕を少し強くした。俺も何だか寂しくなって名前を呼んだ。

「何かあったのか?」

顔なんて見られなくて背中を向けて話す。
返ってこない返事に俺は食の腕を掴んだ。

「言いたいことがあるならちゃんと言え、気になんだろが。」

ぽつりぽつり背中に落ちてくる言葉はとても甘ったるい。

「辛は優しいです。」

「そんな辛に私はいつも救われているんです。」

暖房の暖かさみたいなぼうっとした声。

「このままじゃ、辛に嫌われてしまう。」
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