倉
□野菊
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私の好きな本に
「野菊の墓」と言うのがある。
愛しい人に、あなたは野菊のような人だと言い。
私は野菊が好きだとつぶやく。
そんな淡い恋の話。
辛もなんだかそんな感じだ。
爪の垢ほども嫌みなところがなく、凛としている。
そこで私は気になった。
辛から見た私は一体どういう風に映っているのか。
その本の中では
私は竜胆(りんどう)の花。
「ねぇ、辛。私って花にたとえると何の花ですか?」
辛はもちろんこの本を呼んだことがなければ、花の名前もあまり知らない。
きょとんとした目が少し上にずれて思案する。
よっぽど思いつかないのか、うなり出すしまつ。
「すみません、そこまで考えなくても大丈夫ですよ。」
辛を気遣った言葉は逆効果。
負けず嫌いに、火に油。
悩みに悩んで絞り出した答え。
「桜の花。」
そういや、最近ニュースでも桜の開花予想が見られる。
「どうしてです?」
聞くと下を向いてしまった。
ぼそぼそとつぶやく解答。
「・・・白いから。」
耳を朱くして、もっと違う解答がある。と自分で私に知らせてしまう。