□恋は
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ある晴れた日。
ドアを開けると愛しい人。

「よお」

辛から家を訪ねてくるなんてめったにない。ここで抱きついたりするからいけないのだとぐっと我慢。

「どうしたんです、辛から家に来るなんてめずらしい。」

今日は機嫌がいいらしく、にっと笑った。これが可愛い。

「キャッチボールしよう。」


辛が言うには、
今度の土曜日に行われる野球の試合に助っ人として出場してほしい。とカバオ君達にお願いされたらしいのだ。

「しょくーいくぞー」

結構な距離がある。
白いボールは予想以上の速さで飛んできた。グローブの中に収まった時少し手に痺れを感じる。

「なんでとれるんだよー」

向こうでは少し怒った様。
しかし辛はキャッチボールをする気があるのだろうか。
山なりな返球。

「ちゃんとなげろっ」

辛はだいぶ本気らしい。



夕方になった頃。
そろそろ帰りましょうと提案した。じゃないと永遠キャッチボールは続くだろうから。


「カーブ」

にっと笑って最後の一球。
ぜったいとれない決め球。




「だから、なんでとるんだよ!」

かっこ悪く、バランスを崩して膝をついてしまった。辛の足音が近くなって顔を上げる。
白いボールを手渡して

「カーブはキャッチボールに反則ですよ。」

「ぜったい捕れないと思ったのに。」


少しすねているようだ。
立ち上がって膝のあたりの汚れを払う。


「ま、でも、ありがとな。」

にっこりと笑った。

愛しい。
キスをするといつも通り。
顔を真っ赤にして殴られた。




あなたは私のかっこ悪いところに気づかない。




●おわり●

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