□親愛なる
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俺には野分に知られてはならない癖がある。





ガチャリ。

これで本日、3回目。
ポストを開けた。




携帯の電波は
もう届く距離なのに。


「今日は帰ってくるのか?」

なんて帰ってきて欲しいみたいな事は絶対に言わない。
あいつも頑張っているんだ。むしろ、応援してやるべきじゃないか。


何度、問い合わせをしてもメールは来てない。

当たり前だ。
電波の良い所に置いてあるんだから。


何度も何度も繰り返す。
いい年して何やってんだ。
バカの一つ覚え。


今日も窓から光は見えない。いい加減、俺が居る時に帰って来いて言うんだ。

ガチャリ。

ポストをのぞいた。
あるのはいつも通り
業者からの宣伝ばかり・・・

「ん?」

白い封筒。
くるりとかえすと野分の文字。
その場で丁寧に封を切る。

「もうすぐ帰れそうです。
野分」


いつものよくわからない文章。


変な癖があるのは俺だけじゃなくて、それももう知られていて。


昔、国語の教科書に載っていたある話を思い出した。

ずっとずっと誰かから手紙が来るのを待ってる話。





顔が熱い、心臓うるさい、

あ゛ーもう。

携帯を握る。



dear 野分

「今日の晩飯、
何か喰いたいものあるか?」



●おゎり●

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