庫
□ほそくながく
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向かい合って、そうめんをすする。何でもない平和な昼飯。
食の家へ呼ばれたのはいいが
こいつの家は暑い。
食は汗をあまりかかないらしく、クーラーなんてつけないし、扇風機もまだ出ていない。
それでも、まあ。
俺が来る時のためにアイスを買っておいてくれるのでよしとする。
「あの、辛。」
突然、食が箸をおいた。
俺はすすっていたそうめんをとりあえず胃に流し込む。
「な、なんだよ。」
食のあらたまった態度につられて俺も箸をおいた。
「ずっと気になっていたんですが。」
食はばっちり俺と目を合わせてくる。すって、はく。
「キスとかする時に辛はなんで嫌って言うんですか?」
「・・・。」
改まって何を言うのかと思えばこんなことかよ。肩の力が抜ける。
でも、この質問には答えなければならない。最近、食はこればっかりなのだ。
あまりはっきりとは覚えていないが、情事中には必ずきかれるし、抱きしめられそうになって殴ればまたきかれる。
「本当に辛が嫌なのなら、」
あまりに俺がちゃんと答えないから、食は変な方向へ考えを巡らせてしまったようだ。
「・・・恥ずかしいから。」
きょとん。
とした顔。
「本当に?」
「うん。」
「キスするのも?」
こいつには日本語が通じない。
そりゃそうだ。
こいつはそういう奴なんだ。
「顔近くなるじゃねぇか。」
「そう、ですけど。」
恥ずかしい。
顔赤くなるのも恥ずかしい。
顔近くで見られたら、俺が動揺してんのバレそうだから嫌だ。
俺がこんなにドキドキして、いっぱいいっぱいなのに、お前は笑ってる。
だから悔しい。
だから嫌だ。
「じゃぁ辛、ゆっくり慣れていきましょうね。」
なにが起きたかわからない
速さで、食はキスをした。
麺つゆ ついてたかも・・・
いつもいつも
勝手で 俺の話なんて
きいてねぇし
っとに、
だから、
そういうところが
嫌だっつってんだろうが!!
●おわり●