擬アン

□ぽかほか
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正月のばたばたも終わって、みんなでパン工場に集まっている。ジャムさんに新年のあいさつをしにやってくる滅多に会えないやつ見たさに俺は三箇日ほとんどここにいた。

大きな机に、餡、食、クリーム、メロン、ジャムさんに、バタコさん、みんなで円になって座っていると大家族みたいだ。

クリームとメロンは正月に遊びすぎて眠たそうにしている。俺は、この三日間ずっとクリームの遊び相手だった。凧揚げに、罰ゲームつき羽根つき、カルタ、坊主めくり伝統的な遊びをやりすぎて若干俺も疲れている。

「クリーム、辛と一緒にお風呂入ってきなさい。」

バタコさんは正月の片付けがやっと終わって、ジャムさんの隣でコーヒーを飲んでいる。

「辛、一緒に入ろ!」

服のすそをぎゅっと握ってニコニコ笑顔で言われたら、断れない。

「よし、行くかっ」

ちらりと視界に入った食は、コーヒー片手に餡と話していた。


クリームと風呂に入るとひやひやする。俺一人だと小さな風呂が、クリームが隣にいるとすごくでかく感じる。この風呂桶でさえ凶器になってしまうのだ。あんな小さな手で、桶のふち並々いっぱい入れるから重さで手を離してしまう。あのまま頭にあたったら。と考えるとどうしたって世話をやいてしまう。

子供特有のさらさらの髪を、爪でひっかかないよう指先に注意しながら泡立てる。そのまま四方八方に髪をひっぱって。

「はい、悟空!」

こうやっただけでクリームは大喜びしてくれた。

「辛もやってよ」と言われとりあえず、髪を縦にひっぱって

「はい俺、トランクスー」

そこからはもう、カメハメ波だった。打っては打ち返し、水をかけあい、時々べったり髪をなでつけてフリーザーにしたり、一本ちょろんと出してピッコロにしたりとルールもなにもないやりたい放題だ。


「辛たち、お風呂場で何やってんでしょうね。」
「ほんと、煩いね。」


そのまま浴槽につかって百まで数えて風呂から上がった。クリームの体をふいてやるのに自分の体が揺れるのが、気持ち悪い。頭がくらくらする。なんだか真っすぐにいられない。

クリームが泣き出しそうな顔で、俺の顔を覗き込んで、急いでかけていった。

「ジャムさんっ、たいへん!辛が!」





瞳をうすくあけると、食の顔があった。何度か瞬きを繰り返して輪郭を取り戻していく。

「辛、もう子供じゃないんですからのぼせないでください。」

ハタハタと、冷え症の手が団扇で扇いでくれる。顔に当たる風が気持ちいい。にゅっと小さなクリームの顔が出てきた。その表情は曇っている。

「楽しかったから、遊びすぎちまったな、でも大丈夫だから。」

頭を撫でてやると、なんでかクリームは泣き出した。どうしたもんか、と食を見上げるとデコピンされた。

「クリームに謝りなさい。」

何でだよ!っと怒ろうと思ったが、やはり泣かせてしまったのだから仕方ない。

「クリーム、ごめんな。心配かけて。」

クリームは、涙を拭いた。

「でも、また一緒に入ろうな。」

それからいつも見たいにくったくなく笑ってくれた。

「辛だけでは心配ですから、次は私も一緒に入ります。」

「何いってんだてめぇ!!」

「ほんと?!」

怒る俺とは正反対に、クリームの目が輝いた。こいつ、子供を利用しやがった。

「はい、また今度ね。」

そして適当にあしらう。

「お前大人だな。」

「そんな、全然。」

笑う悪戯っぽい顔が腹立たしい。悪い大人の典型だ。でも、俺はクリームみたいに、騙されない。それが少し残念に思った。


●おわり●





→ドラゴン◎ールすいません

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