擬アン

□とどかない
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空は青くて、雲は白くて、絶好のいたずら日和。今日こそ勝てる、はずだった。

だけど、結果は餡にふっとばされて森の中でうなだれている。

今日の餡はいつもより酷かったな。甘えているわけではないが、回数を重ねればわかってくる。

あ、こいつ本気で怒っているな、とか、遊んでやがるなとか。

今日は、どっちでもなくて、表情はいつも通り笑っているのに、酷い殴りようだった。そのおかげで、体中痛すぎて木にもたれるしかない。


突然、一斉に鳥の群れが羽ばたいていった。

「やあ、ここにいたんだ。」

現れたのは、餡だった。俺様の前に立って、うすら笑いで俺様を見下ろしている。

「まだ何かようがあるのか?」」
これ以上戦ったって、絶対に勝ち目はない。背中を汗がすっと流れた。

餡は、「会いに来たのに」って、首をすくめた。そのまま俺様に一歩一歩近づいてくる。餡の足が俺様の左足を踏みつけそうになる前で止まってしゃがみこんだ。俺様の顔を覗き込む餡の顔をめがけて右手を振りぬく。その手は餡にとられてしまった。まずい。そう感じた時にはもう遅かった。

餡の唇が俺様のそれに重なる。

俺はたまらず目を閉じてしまった。唇はすぐに離れた。俺様が目を開けると、餡がにっこり綺麗に笑った。

「ねぇ、菌。人類皆兄弟っていうけどさ、だったら僕ら近親相姦だね。」

ひどく歪んだ笑顔が苦しそう。
たまらなくなって叫ぶ。

「貴様、何言ってるのだ。僕らって、俺様を巻き込むな!お前が変態なだけなのだ。」

なんだか様子がおかしい餡に、いつも通り必死にわめきちらす俺様の唇を餡がもう一度ふさいだ。

寂しそうに離れた顔は、今にも泣き出しそうにくしゃっと潰れている。

初めて見る顔だった。

「君には冗談だってまだ言えないんだね。」

そう言って、ふわっと飛んで手を振った。

何が、冗談だったのだろう。
ひとつもあいつは冗談なんて言っていない。

甘えているわけではないが、いつもならこのまま送って行ってくれるのに。なんて、手をのばしかけてやめた。あんな顔をさせておいて、言えなかった。

俺様は、またうなだれる。

あいつのわかりにくい告白を拒絶しておいて、次の瞬間には手を伸ばそうとするなんて。

いつまでたっても交わらない。

それが正解。


なのに、後悔。
しているだなんて。



●おわり●


餡→←菌です
にしてもいちゃつかない二人

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