擬アン

□砂糖少々
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そういう行為が終わった後、珍しく辛が起きていた。いつもなら後始末をすると、すぐに寝てしまうのに。

「お前の髪の毛邪魔で寝れないんだけど。」

ベッドの中で見つめあうのは、まだ数回しかしたことがない。いつも辛は、私に背を向けてしまうから。辛は、私の髪を一束もって、好きなようにもて遊んでいる。私は、辛が安眠できるようにと起き上がって、近くの机を探す。眼鏡がなくても勝手知ったる自分の家だから大丈夫。ゴムを見つけて髪をまとめる。その間も辛はじっと私を見ていた。ね、これでいいですか?って笑ってまた元の場所にもぐる。

すると今度は、指をとられた。掌をつかんで、まじまじと見つめる。時々指と指をつかんで左右に広げたり、爪をなでたりされた。

「俺最近、カレーの食べた皿とか洗いすぎて手黄色くなってきた気がする。」

私は、答えるように逆に辛の手をとった。私の手より、少し小さい、男性らしいごつごつした手だ。この手がさっきまで私の背中に爪をたてていたのだと思うと、たまらくなってしまったが、気をまぎらわせた。

私にされるがままだった辛いの左手は、私の手を払いのけて、私の鼻をつまんだ。

「なにするんですか」

そういうと、次は頬を引っ張られた。もちろん痛みはない。優しい、優しい手だった。

「接触欲だよ。」

そういって、私の頬をまた引っ張った。

「保健の授業で習っただろ」

保健の授業というフレーズが、辛らしいなと思った。

「ひたひです、かれー」

痛くはないが、嫌がった方がいいだろうと抵抗してみる。辛は面白がる風でなく、くすりと笑って手を離した。

「もう寝ましょう。」
「なんだよ、それ」
「あんまり辛が可愛いから」
「臭いものには蓋!」
辛が難しい言葉を得意げにいう
「早く寝なさい」
「寝る気になれば、すぐに寝れる」「じゃあ寝ましょう」
「でも起きてんだよ、頑張って」

今度は本当に力をこめて、私の頬を引っ張った。

「だからお前も起きてろよ」



今日はきっと眠らない。もうカーテンからは薄く白い光が漏れてる。私の頬の辛の手を包んで、やんわり剥がしキスをする。辛は当然だといいたげな顔。

なんでもない話を同じベッドの中で話すなんて、まるで運命共同体。細胞膜をこえて繋がれる。



●おしまい●

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