擬アン
□コンラン
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玄関の扉を開けると、メイドがいた。
「おかえりなさいませご主人様。」
美人だがやたらと図体がでかいメイド。言っておくが俺は独り暮らしだし、鍵は俺がもっているものひとつだけだ。
「きもい!!お前、何やってんの?!」
渾身の力で、正当なことを叫ぶ。
「いつもお疲れの辛に少しでも癒しをと思いまして。」
食のはにかんだ笑顔が俺をさらに苛立たせる。はーと大きなため息がでた。頭のいいはずの食がどういう理論を使ったら俺を癒すためにメイド服を着るんだ。アホだアホだと思っていたがここまでとは。
「でも、綺麗でしょう。」
あまつこんなことまで言いやがる。とりあえず、つっこみたいところはたくさんあるが、俺は食の横を通ってリビングに入る。
っと、キッチンの方からチキンの焼ける良い匂いがしてきた。俺の視線に気づいたのか、跡をついて入ってきた食が嬉しそうに言う。
「夜ごはん作っておきましたから、どうぞ。」
その笑顔はいつもの笑顔だが、スカートをはいた食は気持ち悪いはずなのに、どうしてだかどきっとしてしまった。
「飯はうまそうだから食う。」
食は俺がキッチンに立つのをせいして自分でカチャカチャしだした。俺は自分の家なのに在所なく、そのまま椅子に座る。視界に入る食のスカートと白いストッキング。馬鹿じゃないのか、気持ち悪い。でも、顔だけは綺麗な食が振り返る。なんだこれ、頭が混乱する。
目の前に出されたのは、チキンのグリルと味噌汁とごはん。今日は調度味噌汁が飲みたい気分だったから、なんだかバランスの悪いメニューでも嬉しかった。すると当然のように食が向かいに座った。飯は一緒に食うのか、メイドのくせに。完璧主義な食が、細かいことを無視していることが俺を安心させる。
「味、どうですか?」いつもは聞かない小さな気遣い。
「美味い。」
「それはよかったです。」
美人なだけに始末が悪いと思った。あの顔は綺麗でかっこよくて、王子様みたい。そんな設定のはずなのに。
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