純情
□小さな世界
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「もしもしヒロちゃん、あなたどうせ隙でしょう。家に籠もって本ばっかり読んでないで、ちょっと頼まれごとされてくれない?今からそっちに連れて行くから。」
母さんは、電話越しにもかかわらず、いつもの調子で電話をきった。俺の意見は一つもあっちに届いていない。
どうやら今から、家に幼稚園に入学したての子どもがくるらしい。
・・・勘弁してくれ。
頼みの綱の野分はもちろん今日も仕事だ。
誰がどう考えたって、俺と子供は相容れない関係だろう。しかも幼稚園って、日本語は通じるのか?
さっそく玄関のインターホンが鳴った。
ドアを開ければ母さんと、母さんよりもだいぶ若い女性、そして彼女に肩を押されて家に入った男の子。
「ヒロちゃん、お母さん達今から買い物してくるからその間よろしくね。」
もうここまできたら、断ることなんてできないだろう。これはある種の脅迫だ。俺に選択権はない。
玄関に男の子と、俺を残して嵐は去っていった。
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