宝物

□フリーss:ニコヤさん
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電話の向こうで、辛がちょっと意地悪そうに笑ったのがわかった。
つられて笑って、頭も痛い事がわかった。
自分の笑い声が、やけに響く。
『風邪なぁ…あ、んじゃ見舞いに行ってやるよ』
「え?嬉しいですけど、辛は来ないでくださいね。うつったら大変ですから」
最近の忙しさのせいで、きっと疲れが出ただけだし、
どちらにしろ、弱っている今、辛に会うのはためらわれた。
『え〜…遠慮するな。俺暇だし』
「辛は明日仕事でしょう?」
『まぁ。けどお前だってだろ。とにかく行くからな、大人しくしとけよ!』
そう言って、一方的に電話を切られてしまった。
大人しく…しとくしかない、動けない。

「食、お前何食べて生きてんだよ。冷蔵庫空じゃねぇか」
コンビニの袋片手に、やっぱり来てしまった辛を家にあげると、真っ先に、買ってき
てくれた発熱用冷却シートを貼られ、ベッドに寝かされた。
「最近自炊してなくて…えーと、で、辛は何を?」
「みりゃわかんだろ、飯作ってんだよ。お前、起きてからまだ何も食ってねぇだろ。
そんなんじゃ、治るもんも治ぇぞ」
テキパキとキッチンを歩き回る辛。
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