鬼灯の冷徹

□A camellia
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美しい 栗色の髪の毛。
長い睫毛と大きな目。
細くしなやかな手足。
高い身長。
閻魔殿を歩くその女性は 老若男女 誰もが見とれる綺麗な女性。
閻魔殿法廷内に入ると 皆から視線が注がれる。
「あ 深蛉ちゃん。どうしたの?珍しいね??」
その女性は 閻魔大王を見上げて一礼し 透き通るような声で答える。
「針山の視察です」
「そっか。ご苦労様」
再び一礼して 法廷内から去っていった。
「え…今の美人さん…どなたですか…?」
「鬼灯くんの彼女」
「え?」
ぽかんとした顔で 鬼が聞き返す。
「鬼灯くんの彼女だよ」
鬼たちは 揃って騒ぎ出す。
「え〜!!!?彼女って…恋人の!!?」
「うん そ…」
頷き掛けた大王の前を 刃物が横切る。
ひきつった顔で 大王も鬼たちも 一斉に法廷の入り口に視線を送る。
「何余計なこと喋ってんですか。」
冷たくて低い声が 法廷内を貫く。
黒い髪に 黒い瞳。
「ほ…鬼灯くん…」
何とか誤魔化そうと 大王は苦笑いを浮かべる。
「…で.貴方がたも 聞いた訳ですね?」
閻魔大王が 『深蛉』という女性が 鬼灯の恋人であるということは 法廷内に居る鬼たちは 確りと耳にしていた。
「は…はい…聞いていました……」
冷や汗をかき 震えながら頷く。
「…仕方ないですね。針山の視察が終わったのであれば 今日は特に用はない筈です。紹介しましょう」
半ば呆れ気味に 鬼灯が言う。
鬼たちは 一斉に期待の返事をする。
「おっ…お願いしますっ!!!」
先程入ってきた法廷の入り口から 鬼灯が歩いて出ていく。
鬼灯の姿が見えなくなると 頬を赤らめ 獄卒たちは 何やら小さな声で話始める。
「どっちから告白したんだろうな」
「仕事 なにしてるのかな」
法廷の入り口に 再び鬼灯が戻ってくる。
鬼灯の後ろに立つ女性は すらりと背が高く 大きな椿の模様の着物と 頭には酸漿の簪を差している。
「彼がお世話になっております」
深々と頭を下げると
周囲に 花のような香りが漂う。
「いえ!!!こちらこそ!!」慌てて鬼たちは返答する。
「あ あのっ」
…茄子だ。唐瓜に阻止されながらも 深蛉に問う。「どちらが告白したんですか?」
唐瓜が がっくりと項垂れる。
「私ですよ」
にっこりと微笑むその顔は 蝶を連想させるような 美しい笑顔だった。
法廷の入り口に 数人の鬼女が入ってきた。
先頭には お香が立っている。
「あ いたいた。深蛉さァん 衆合地獄からお呼びよォ」
「あら ごめんなさい。ちょっと失礼しますわ」
小さく頭を下げて お香の方へ小走りで近づく。
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