鬼灯の冷徹

□their is bitter enmity between them
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今年も 夏がやって来た。溶けるような暑さとは裏腹に涼しげな表情で 背の高い彼はやって来る。
「おはよ 鬼灯くん」
教員に声をかけられる。
ちらりと切れ長の目をみやり
「…おはようございます」と返答した。
頭脳明晰,成績優秀。
顔立ちが整っていて 女子からの人気も高い。
彼の後ろから 襟元を扇ぎながら もうひとり 顔立ちの似た男性がやって来る。
「あ〜超暑いんだけど!!夏やだ!無理!嫌い!!」
何やらぶつぶつ 夏を貶している。
先程校舎へ入って行った
鬼灯の双子の兄。
軽薄だが 思い遣りのある性格で女子に人気はあるが あまりに多くの女子と付き合い過ぎ 交際期間は短いまま幕を閉じることが多々。
数メートル前で スクールバッグを怠そうに肩に掛けて 鬼灯が振り返る。
「…なにしてんですか…のろのろと…」
「うるっさいな!!」
ふたりが喧嘩をするのは 日常茶飯事だ。
爽快に階段を駆け上がる鬼灯のあとを 年寄りの様に白澤が付いていく。
「あっ 鬼灯くん!」
先に教室に入って行く鬼灯をする見た 派手な身なりの女子生徒が声をあげる。
わらわらと 女子生徒が集まってくる。
「ねぇ〜 今度一緒にマック行かな〜い?」
女子生徒の一人が 甘えたような声で鬼灯を誘う。
「…暇があれば」
女子生徒の方は見向きもせず 曖昧に返答する。
「やった!」
「えっ ちょっと 私も行きたい〜」
「私も行きたい!!」
大抵 鬼灯の周りは女子が絶えず囲んでいる。
「ねー じゃぁ 愛ちゃんは 僕と行かない?」
いつのまにか教室に入ってきた背の高い白澤は 愛 という女の子にまず声をかけた。
「白澤くん 他の子とも行くくせに〜」
口を尖らせて 愛が嫌みを言う。
「ほら そんな能面じゃなくてさァ。僕と行こ〜よ」
鬼灯を睨み付けて 白澤は他の女子生徒も誘う。
「ね じゃあさ 今度 白澤くんも鬼灯くんも一緒にお出かけしよ〜よ」
クラスで一番明るくて元気な 照が提案をした。
流石に 女子の提案ではありながら 白澤も鬼灯も 露骨に渋い顔をする。
「こんなスケベと道を歩くなんて…反吐が出る」
思いっきり白澤に嫌そうな視線を向ける。
「こんなハシビロコウみたいな奴と食事するとか…御免だね」
お互いの空気が 徐々に暗くなる。
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