鬼灯の冷徹

□RIRIS choice
1ページ/6ページ

今日も今日とて 地獄は忙しい。
獄卒たちが慌ただしく動き回る法廷で 閻魔だけがひとり 黒々とした手紙を眺めていた。
其の様子に気がついた鬼灯が 眉間に皺を寄せる。「…手紙なんて暢気に見てないで 仕事してください。何度言えば貴方は…」
まあ こんなやりとりは日常茶飯事だ。
だが 閻魔は素直に謝ることも 反論することもせず 目を丸くして鬼灯を見た。
「鬼灯くん宛てのお手紙だよ。EU地獄から」
またまた迷惑そうに 鬼灯は手紙を受け取った。
「サタン様ですか」
「ううん 違うみたい」
EU地獄からの手紙でサタンではないというと…
彼しか 心当たりはない。蝿の王。ベルゼブブだ。
きっと彼だろう。
「何の用ですかね」
どうでもよさそげな雰囲気で鬼灯が手紙に視線を落とした。
…やはりそうだ。達筆で
彼の名前が書かれている。
「……なんですかこれ」
其処に書かれていたのは
彼の名前ではなく 「レディ・リリス」。
彼の妻の名だ。
手紙の内容を目で追うと 何とも気分の下がる文が書いてあった。
「…………デート?」思わず溜め息が出る。
この忙しい時に…。
当然 行く気など更々無い。
手紙を 屑籠に棄てようとした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ