★ブック

□君となら
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「もう夏も終わりか」

つまみの焼き鳥を口にしながら、銀時は唐突にそう呟いた。
「んー」
そうだな、と土方は酒をくいっと煽りながら適当に流した。
「聞いてんのォ土方?」
「…ん?あぁ」
「もー」
銀時は苦笑いでほろ酔いの土方を窘めた。
「だからね。夏も終わりになるじゃん?」
「それがどうした」
酒を飲む手を止められてむすっとしている土方に、銀時はにまっと笑みを浮かべた。
「まだやってないこと、あるでしょ」
は?とぽかんとした顔を浮かべる土方に銀時はきゅんと胸の高鳴りを覚えた。普段は瞳孔開きっぱなしでがんとばしてくるくせにふとした時の表情が物凄く可愛い。しかし土方はすぐに顔を曇らした。
「…やってないことばっかだけどな」
銀時と土方、二人は恋人だった。男同士だけどいつの間にかお互い惚れていた。
なのにデートらしいデートは一度もしたことがない。理由は土方の仕事の都合。不規則なうえ、急に仕事が入る事も多い。この夏だって祭りも行けてないし海だって行ってない。
申しわけなさそうな顔をした土方の頭を、銀時はふわっと優しく撫でた。「…っ」
「気にしてねぇよ。今日こうして飲みに付き合ってくれてるし」
銀時は優しく微笑みじゃあさ、と続けた。
「これなんて、ど?」
顔を上げた土方に薄っぺらいチラシを見せた。
「…花、火」
「ん。」
花火大会あんだよね、やっぱ夏と言えば花火じゃん?と銀時ははしゃいだ様子で言った。
「これなら夜だし、土方も行けると思って」
「銀時…」
デートひとつも満足に出来ないのに文句も言わず、こんなにも自分を思ってくれる銀時に土方は嬉しさと申し訳なさでいっぱいになった。
「仕事、絶対夜までに終わらす…」
「っほんとに!?」
「あぁ」
「やった!!」
ありがと土方、そう言って笑う銀時の笑顔が眩しかった。
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