★ブック

□嫌よ嫌よも好きの内
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がやがやと騒がしい居酒屋で、カウンター席に腰掛けている土方はちら、と時計を見た。
11時近くになる。土方はふうと息を吐いて酒をちび、と飲んだ。

「よっ、土方」
がら、と店の扉が開く音がしたかと思うと、見慣れた銀色がへらへらとこちらに向かって笑いかけた。土方の隣に座り、ごめん待った?とか言いながらも銀時は悪びれなく土方の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「遅ぇよ、自分が誘ったくせに」
土方はぺしっと銀時の手を払いのけると不機嫌そうな顔でそっぽを向いた。
「怒んなよ、ちょっと準備に手間取ってさー」
「うるせぇ」
今日は銀時が一緒に飲みたいと言うから付き合ったというのに。
「ごめんね土方、次のデートは遅れないから」
「デ…馬鹿っそういう事んなとこで言うな!!」
にっと笑いながらそんな科白を言った銀時に土方は顔を赤らめた。二人は恋人同士だった。銀時は男の土方と付き合うことを気にしてはいないらしく人前でも平気でこういう事を言う。土方はそんな銀時に毎回顔を真っ赤にしていた。
「あ、酒もらうね」
「自分で頼めよ」
「やだ。これがいい」
我が儘で子供みたいな事を言って毎回ムカつかせるくせに
「いいじゃん、ね土方」こんなきらきらした笑顔で言われるから結局いつも許してしまう。
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