★ブック

□素敵な悪戯
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「ひーじかたくぅん」

窓の向こうから聞こえた間延びした声に土方は眉を寄せた。書類に向かっていた手を止め立ち上がった。この聞き覚えのある声にはあー、と盛大にため息をついた土方はがらりと襖を開けた。
「何のようだテメー」
土方が低い声で思い切り睨みつけながらそう言ってやると、開けた扉の前にいたのは恋人である坂田銀時…だったが全身を包帯でぐるぐる巻きになっている。
「な…っ!?どうしたソレっ!!」
土方は包帯だらけの銀時に飛びついた。
「怪我かっ!?今度は何したんだお前っ…」
「わわっ土方くん落ち着いてー怪我じゃないからコレェっ」
包帯だらけの銀時を見て大怪我をしたのだと思い込んだ土方を銀時はなだめた。怪我じゃない、そう聞いた土方はぴたと止まった。
「ぇ?」
「だからぁ、仮装!コスプレ!ハッピーハロウィーンだよ」
ちなみにこれミイラ男ね、と笑った銀時に土方はみるみる顔を真っ赤にさせてどごぉ、と銀時を勢いよく殴った。
「や、ややこしい格好すんじゃねえ!」
「いだだだっちょ、本気で大怪我するからっ」
「うるせぇ!!」
土方は顔を真っ赤にさせながらそっぽを向いた。自分が怪我をしたらあれだけ心配をしてくれるのか、と銀時は嬉しくなったのだが普段クールな土方にはめちゃくちゃ恥ずかしかったようだ。
「ごめんって、土方くん誤解させるようなことして」
銀時が真剣に謝ると土方は少しだけ頬を紅潮させながら銀時の方にちらと向いた。
「…何だってんな格好してんだよ」
「せっかくのハロウィンじゃんか」
にかっと無邪気な笑顔を見せる銀時に土方は子供か、と苦笑した。
「てことで、trick or treat」
清々しい笑顔で両手を差し出してくる銀時に土方はきょとんと不思議そうな顔をした。
「は?」
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞって意味だよ」
だからお菓子ちょーだい、とニコニコしながら笑いかける銀時に土方は呆れ顔で突っぱねた。
「生憎だが、うちに菓子などはねえ諦めろ」
「えー」
「だいたいな、大の大人がガキみたいにんな事すんじゃねえよ」
そう言って部屋に戻ろうと背を向けた土方に銀時はふー、とため息をついた。
「ちょっと待って」
「なんだ俺は仕事が」
苛ついた様子で振り返った土方の手首をぐっと掴んでそのまま部屋の中に倒れ込むように押し倒した。
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