★ブック

□すれ違い純情
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愛してるって言われるたびに


心はきりきりと悲鳴をあげる











「土方」

賑やかなかぶき町で巡回中の土方の名を呼ぶこの声に、彼は一瞬躊躇ったが振り向いた。
「なんだ、万事屋」
低い声で唸るように、目の前にいた銀髪の男にそう言った。
「怖いよ土方くん」
すると銀髪の男、坂田銀時はへらっとした顔を緩ませた。そんな銀時に土方はぶっきらぼうに返事を返す。
「なんか用か」
「別に用ってわけじゃねーけど」
用がなきゃ会いに来ちゃ駄目なの?、と銀時が言うと土方は黙って視線を落とした。

「土方、好きだよ」

小さな声で銀時は囁くようにそう言った。ふ、と伸びてきた銀時の手を土方はぱしっ、と払いのけた。
「うるせぇ…周りに聞こえんだろ」
「聞こえないよ」
ぱっと顔を背けた土方に銀時は体を寄せる。固く握りしめている拳に指を絡めて優しく包み込むようにするとびくっと土方の体は震えた。

「話、逸らさないで」

銀時の真っ直ぐな瞳が土方を捕らえて、土方は動けなくなった。







銀時から告白を受けるのは初めてではなかった。

一ヶ月くらい前のことだった。唐突に銀時からそう告げられた。最初もちろん冗談かと思った。でも銀時の瞳は真剣で、その紅い瞳は真っ直ぐに土方を見つめてきて土方の時間は止まった。

ずっと密かに想っていた。銀時のことを、尊敬と憧れと、恋心を抱いていた。だから告白を受けた時は素直に嬉しかった。でもそれ以上に驚きと疑いが大きかった。自分を好きと言ってくれた銀時に応えたかった。でも土方には出来なかった、否、しなかった。


その場から、答えから逃げ出した土方

あの日から銀時はずっと自分に愛してると伝えてくる。

何度も何度も

その言葉に応えもできず逃げてばかりなのに







だから余計辛くなった

胸が痛くなった




愛してるって言われるたびに

応えたい気持ちと逃げ出したい気持ちがぐるぐると土方を掻き乱して



苦しくて痛いんだ
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