★一次創作

□学戦兄弟ホモ2話
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進路を決めるに当たって
元から希望していた学校が赤軍だったことと、
赤軍が軍というよりは組織的だと噂に聞いたことが決めてだった。
戦いを好まない性格だった佳音は
そうして赤軍に入ることを選んだ。


双子の弟である臣が家を出ていったのは
その頃だった。

なぜ出ていったのか、
どこへ行ったのか、
全くわからず警察に届けようかとも思った。
しかし戦争の世、
ただの家出に警察は動いてくれなかった。










臣と再会したのは
赤軍に入ってしばらくしてからだった。

赤軍の領地である戦場で見かけたのは
見覚えのある後ろ姿


「お、み?」

小さく名前を呟くとその後ろ姿は歩みを止めた。
ゆっくり振り返ったその男は
前より少しだけ大人っぽくなっていた弟、臣だった。


「...!臣、臣だよね」

少し泣きそうになるのを我慢しながら
佳音は彼に駆け寄った。
近づくと前は同じくらいの背丈だったのに
今は目の位置が少し高い。
肩幅も少し広くなっただろうか、

(かっこよくなった、なぁ、臣)

もとからあまり似ていなかったけどもっと兄弟に見えなくなってしまうかな。
弟の成長が嬉しいような寂しいような、


「どこにいてたの?心配したんだよー」

「...」

「学校は?ちゃんと行ってるの?
こんなところにいるってことはもしかして赤軍...」

「違うよ」

ずっと黙っていた臣が口を開いた。
それは
兄さん、兄さん、と
甘えていた時の声とは違った。
静かな
拒絶の声、

「兄さんとは敵だよ」

「え」

臣は自分の胸元から紙束を取り出した。
それはなにかの書類のようで、
端に書いてある紋章を見せるように
佳音の方にそれを向けた。

「...それ、」

赤い彼岸花の紋章
それは赤軍のマークだった。

佳音の顔が険しくなる。

「盗んだ、の?」

「そうだよ」

臣は眉を寄せる兄の表情に満足したように微笑む。
書類の束をしまい直しながら
彼は不敵に口の端をあげる。

「実の弟が敵で、
こんなことしてるなんて
兄さんもスパイかもって疑われるかもね」

「....」

そこに
昔の可愛い弟の面影はなかった。
弟は自分を憎んでいるのだろうか
だとしたら哀しい。
佳音はぐっと声を振り絞って問うた。


「...臣は俺と争うの?
たった二人の兄弟なのに... 」


まっすぐにこちらを見つめていた臣の瞳が揺れる。
一瞬だけ
くしゃり、と臣の顔が歪んだ気がした。





「また、ね 兄さん」

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