君と見た空

□妖の頼み事
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「よぅ、珱姫」
「妖様」

妖様は今夜も私の元へやってきた。
それはもちろん、姉様の話を聞くため。

「ん?そりゃあ、まさか…」

妖様は、私が持っているぷりんの乗った器を指さす。

「…"ぷりん"、かい?」
「はい、そうですよ。姉様は甘味作りがとてもお上手で」

特に、このぷりんは絶品だ。
とろけるような舌触り、優しい甘さ、ちょっぴり苦い"からめる"。
何度食べても飽きない美味しさだと、自信を持って言える。
そのぷりんに、妖様の熱い視線が向けられている。

「…食べますか?」
「いいのか?」
「はい。…少しだけですよ?」
「あぁ」

妖様が笑みを浮かべてぷりんを口に運ぶ。
このところ妖様を見てきて、妖様なら、姉様を幸せにしてくれるだろうと思うことがある。

「…そういえば、煌姫の力は何だ?」

ぷりんを数口食べた彼は、初めて会った日と同じ質問をしてきた。
そういえばあれ以来、違うことばかり聞かれていた気がする。

「姉様は、水を操ることができます」
「水?」
「はい。雨の日でもぬれたりしないんです」
「ほぅ、そりゃあ便利だ。珱姫は、病を治す力だったか…」
「はい。でも…」

自分の両手を見ながら、姉様の顔を思い浮かべる。

「でも、なんだ?」
「どんな病を治せても、どんな傷を治せても、私には、姉様の心の病をいやして差し上げることができないのです…」

幼い頃母様をなくした私にとって、同い年のはずなのに、姉様はもう一人の母様のようだった。
この世で一番大切で、大好きな姉様。
姉様の病を治せない力に、何の意味があるというのでしょうか。

「…心の病、か…」
「はい」
「よし、ワシが煌姫にあって話を聞いてみよう」
「妖様…よろしくお願いします」
「任せておけ」

この人なら、姉様を救ってくださるでしょうか。



side heroine.

最近、特に夜になると珱の部屋から話し声が聞こえる。
珱は独り言を言うような性格ではないし、話し相手もそんな頻繁にいないはずだ。
その状況から考えられるのは、珱の運命の相手──ぬらりひょんが、珱のもとを訪れているということだ。
原作より頻繁に来ている印象を受けるけど、二人の仲が良いようならそれで問題はない。

『…後、どのくらいだろう…』

珱のことが好きだから、悲しませたくない。
珱には生きていてほしいし、ぬらりひょんにもできることなら傷ついてほしくない。

だから、"その時"が来たら、私は珱の代わりになろうと思うんだ。





to be continued... (back)

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