血染め桜-bloody cherry-
□池田屋事件1
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side heroine.
6月某日、千鶴に外出の許可が出た。
私は普段から三番組の伍長として巡察へ行っているが、今日はそのこともあってか、千鶴を連れていくという一番組と一緒に巡察に行くことになった。
「瑠璃亜、雪村の護衛を頼む」
『…わかってるわ』
巡察に出かける前、歳三はわざわざ私に確認に来た。
全く、護衛をつけるくらいなら外出なんて許可しなきゃ良いじゃない。
一が彼女の剣の腕を見込んだって話だけれど、オーラを見ている限り、真っ直ぐなところは認めるけれどそれだけだと思う。
ただ、彼女の潜在能力を見るためだと思えば、これも無駄ではないかもしれない。
人外の力は、彼女の危機に力となってくれるのかしら?
「あれ?瑠璃亜さんも行くんですか?」
『えぇ、貴女の護衛だそうよ?』
「私の…」
「行くよ、二人とも」
「あ、はい!」
道行く人に父親のことを訪ねて回る千鶴の傍らで、周りに軽く気を配りながら立っていた。
しばらくそれを繰り返していると、桝屋という店で見かけたという情報を得た。
「ありがとうございます!」
教えてくれた人に礼を言って、千鶴は真っ直ぐ桝屋へかけていく。
『千鶴!』
その静止の声が、千鶴に届くことはなかった。