君と見た空

□望まぬ過去と未来
2ページ/2ページ


side nurarihyon.

甘味を作っている時間だと聞き、煌姫に会いに行った。
妖であるワシに驚くだろうと思っていたが、煌姫は予想に反して珱姫に対するものと同じような反応を返した。

出来上がった甘味を渡され、それを珱姫に届けるために台所を後にする。
その時ワシの中に残っていたのは、珱姫ついて語る煌姫の姿だった。
煌姫からは、心から珱姫のことを思っていることが感じられた。
だが同時に、諦めや悲しみを含んだ何かも感じた。

そして思った。
煌姫のこの表情が示すものが、珱姫が言っていた"心の病"なのだろうと。


翌日。
再び、今度は直接煌姫の部屋へと会いに行った。

「よぅ、煌姫」
『ぬらりひょん…また来たの?』
「ワシは自由な妖じゃからな」

部屋に入って声をかけると、煌姫は不思議そうな顔をした。
そして、ワシがぬらりひょんのことをそう称すと苦笑を浮かべる。
まるで、仕方ない、とでも言うかのように。

「あんたは、妖のワシが怖くはないのか?」
『…怖くはないわ。妖にだって、良い妖はいるもの。…逆に、人が皆、善とは限らないわ』
「…そうか。…なぁ、煌姫、」
『何?』
「あんたはどうして、そう悲しそうな顔をしてるんじゃ?」
『え…、…』

唐突に尋ねれば、ワシにそう聞かれることは予想外だったのか、驚いたような、それでいて、困惑したような表情になった。
そしてその顔は、徐々に悲しそうなものへと変わっていく。

「…すまん、忘れてくれ」
『…ここは、…』
「…煌姫?」
『…ここは、私の望んでいなかった過去であり、望んでいなかった未来。…だからきっと、私にはすべきことがあるの』

望んでいなかった過去と未来…?
一体、何のことを言ってんだ?

煌姫が言った言葉の意味は解らなかったが、そう言った時の煌姫は儚くて、ワシの前から今すぐにでも消えてしまいそうだった。
どうやら、煌姫の心の病とやらは、相当重いものらしい。





to be continued... (back)

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ