Shizuki's Dream
□紫の在り方
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「敦、それ新しい味のまいう棒?」
「うん。琥珀ちんも食べる?」
「…食べてみる。」
どうぞー、と紫原はまいう棒を一本差し出す。
琥珀は開け口を慎重に切ってまいう棒を口に含む。
一方の紫原は今食べて終えているものと 琥珀に譲ったもので最後だったらしく、
自分が食べ終わると横目で琥珀が食べているのを眺め始めた。
琥珀は残り少なくなったまいう棒を袋から全部取り出して口に銜える。
「琥珀ちん、それちょこっとちょうだい?」
「んー?しょーふぁなひふぁ……っ!!」
紫原はいきなり反対側をポッキーゲームのように銜えるとサクサクと食べながら顔を近づけていく。
「んんんっ!んっんっ!!」
敦っ!待った!!と琥珀は紫原を押し返そうとするが全くの無意味な抵抗だった。
紫原の口は琥珀の口にたどり着くと唇に噛みつくように口付ける。
離れようとしてもいつの間にか 琥珀の後頭部と腰には紫原の大きな手が回っていた。
「ん…!」
口の中をじっくり味わうように舌を這わせ、味わい終えると口を離す。
離れた二人の唇は名残惜しそうに糸が引いた。
「っ…敦…!!」
「琥珀ちん、食べていい?」
「は…!?」
「だめ?」
「……だめ。」
琥珀は溜め息をつくとそう答えた。
紫原は両腕で琥珀の腰に抱きつき、 上目に琥珀の顔を覗きこむ。
「 琥珀ちん俺とするのそんなにいや?」
「いやとかじゃないの。」
ただ、と琥珀は続ける。
「敦と無闇にしたくないだけ。ただのヤりたがりな男みたいに。…わかる?」
「…好きでも?」
「好きでも。」
紫原は拗ねながら 琥珀をさらに抱き寄せて少し力を入れて抱き締める。
ちょうど 琥珀の腹部に顔を埋める形になった。
琥珀は再び溜め息をつくと紫原の耳元に唇を寄せ、静かに囁いた。
「敦…アタシは食べたらお仕舞いなお菓子じゃないでしょう?」
「!…………」
ぎゅ、と腕の力が強まる。
何を怯えたかのように腕は少し震えていた。
自分の前から消えてなくなってしまうのを恐れているのか。
「…いい子。」
でも、無闇で無意味なことを感じさせるよりは、今は手懐けてやりたい。
この味は恐らく彼に合わないだろうけど、少しずつ、少しずつ…
アタシも貴方に染まっていくつもりよ。
end.
忠犬紫。
私が書いたら惰犬。
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