Dream

□ああ、愛しの
2ページ/3ページ







「アイツが死んだ」


愉快そうに言ったリドルの言葉を聞いて、ユーフェリアは徐に目を見開いた。

死んだ、死んだ。誰が。あの人が。死んだ。何故、何故、何故。どうして、死んだ…

嘘よ


「どうしたユーフェリア」


全てを理解しているはずなのに、意地悪く彼は彼女に問いかけた。


「どうしてそんなにも動揺している」

「動揺なんて」

「ああ、ユーフェリア。イケナイ子だね」


リドルは咎めるようにユーフェリアの首筋へ歯を立てた。瞬時にぴくりと小さく跳ねた彼女を見て、満足げに目を細める。

触れた歯が皮膚を引き裂き、溢れ出す鮮血を舌で舐め取られている。

そんな恐ろしい錯覚を覚えたユーフェリアはなんとか自身を落ち着かせようと、そっと瞼を下ろし、ゆっくり深呼吸した。


「何故動揺する。喜ばしいことだろう。君だって自ら僕を選んだ」


彼女はきゅっと服を握った。


「分かってる。それでもリドル」

「まだ思うか。アイツは君を切り捨てた愚かな男だというのに」


これは未練というのだろうか。自身の中に渦巻く思いを探る。

確かに、私は彼を深く愛していた。呼吸をするのと同じくらいに、大切だった。いなければ生きていけないと思うほど、愛して、いた。

しかしそれはもう今の私の中では、過去の話になっていた。

彼は私を切り捨て自らの願いをとった。私もそんな彼を愛し続けることができず、リドルを選んだ。

未練などあるはずがない。あるわけがないのに、彼の死に胸が痛むのは何故なのだろうか。









次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ