Dream

□いつの日かきっと
1ページ/5ページ







 彼女は扉を開けた。

 頭上で煌めく夜空は映さず、
彼女の瞳は空虚な闇を映すばかり。


「ヴォルデモート」


 目の前に佇む探していた人物に声をかけ、
ユーフェリアは彼の側に寄った。


「ユーフェリアか」


 耳に低い声が纏わり付く。
 いつにもまして不機嫌そうな声色。

 ああ、なるほど。


「裏切り者には、粛正を?」


 彼の下に転がるのは、
先日からどこか怪しいと思っていた男。

 男の顔は恐怖を表したまま止まっていた。


「馬鹿な男だ」


 鼻で笑うように言った彼に同意し、
ユーフェリアは笑いを含みながら言葉を紡ぐ。


「裏切り者の行く末など、
分かりきっていることなのにね・・・」


 ざわめく森を背後に、
ここに来てようやく彼はユーフェリアを見た。

 暗い闇の中でも赤く底光りする、
美しいほど透き通った狂気を映した瞳。

 視線を交えただけで
心の奥まで見透かされたような恐ろしさを覚える。


「どうしたの?」


 彼女は平然を装いながら尋ねた。


「この男を適当に処分しておけ」

「ええ。わかった」


 彼は表情を変えず、
彼女の脇を通り過ぎていった。


「…ったく」


動かぬヒトであったモノを見やり、
彼女は悲痛そうに顔を歪めた。












次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ